二人は、城の堀の近くまで歩いて来ていた。
「清正、こんなところまで連れて来て何の用だ?」
「…いや、この場所に用がある訳じゃない。」
 清正は先ほどから三成の手を握ったまま離さない。少し俯いて険しい表情をしているし、そんな彼の様子を三成も不審に思った。
「では何だ?」
 清正は少し躊躇ってから、ぼそり、呟いた。
「……お前と左近を離したかった。」
 思わぬセリフに、三成は驚く。
「それは…、一体どういう「俺は、あいつには適わない。あの戦でだって、みね打ちだった。だから救われたんだが、俺は……っ!」
「清正……。」
「…お前を、取られたくないんだ……。」
 清正はとうとう下を向いてしまった。まるで童のようだ、と三成は思った。小さく震える大きな童を、三成はそっと抱き締めた。
「さっきは、左近に礼を言っていただけだ。」
 そして、優しく、宥めるように諭すように言う。
「こうしてまたお前と触れ合えることが、俺は何よりも幸せに思う。この幸福を与えてくれた家臣に、礼を述べるのは当然だろう?」
「三成……。」
 清正は三成の腰に手を回し、抱き締め返した。
「ああ、俺も幸せだ。」
 二人はこつん、と額を軽くぶつけると、くすくすほほ笑み合った。



 かつて袂を別ったあの日と、同じ色の夕日が清正と三成を包む。しかし今の二人にはその茜色が、とても美しく見えた。


 もう、離れないから。


    ―終―


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