あれ!?

 眩しい朝日を背に受けて、正則がご自慢のリーゼントをゆっさゆっさと揺らしながら、鼻歌交じりに中庭を歩いている。彼が向かう先は、城の敷地内にある道場である。

 何故正則がこんなに上機嫌かと言うと、彼と兄弟同然に育った三成と清正の二人が、今日は手合わせをしてくれるのだ。清正が槍の稽古に付き合ってくれることは度々あるが、三成が相手をしてくれるのは本当に珍しい。久し振りに兄弟水入らずの時間を楽しめると、非常に喜んでいたのだった。


 正則は一つ年下の清正を随分と慕っていて、彼の言うこと・やることは正則にとって絶対、と言って良いほどだった。それに対し一つ年上の三成とは何かと衝突してばかりだった。しかしその悪態は決して本音によるものではなく、「素直になれないお年頃」を卒業できないまま今に到っているせいだったりする…。なんだかんだ、正則は等しく二人共が大好きなのである。





 「清正〜ぁ!!」
 広い道場に着くと、短く切り揃えられた見慣れた銀髪を見付けて、正則は背後から飛び付くように清正に抱き付いた。
 「ぅわっ!?
……正則か。早く離れろ馬鹿。」
 むさ苦しい男の突然のハグ。更には間近に迫るリーゼントが油臭くて、清正は顔をしかめた。そんな清正の様子を気にも留めず、正則は嬉しそうに挨拶をする。
「よぉ、早ぇじゃんか!俺が一番乗りかと思ってたのによー!!」
「朝から騒々しいぞ、馬鹿。」
 そこへ、三成もやって来た。
「おぅ頭デッカチ!!来たのお前が最後だぜ〜!」
「騒々しいと言ったのが聞こえなかったのか?大体、早く来るのを競う競技などしていないだろう。」
「何ぃ〜!?」
「……二人共、やめとけ。」
 顔を合わせるなり相変わらずの二人に、清正は小さく溜め息を吐いたのだった。
 だが三成は清正の仲裁を聞かず正則にずいっと近寄る。
「正則、お前はそんなことを言う前に、着物の合わせが逆なのだよ。それでは死人だ。」
 そしてなんと、かいがいしくも正則の着物を直してやったではないか。三成も相当に機嫌が良いらしい。幼馴染み三人で過ごせる時間を楽しみにしていたのは、どうやら正則だけでは無かったようだ。
「…お、おー……。あ…ありがとな……。」
 三成の思いも寄らぬ行動に、正則が照れながら礼を言う。三成からふわりと香る良い匂いやすぐ側で見る整った顔立ちに、どぎまぎしているようだった。


 それを見て面白くなさそうにするのは清正だ。
「おい、三成。こいつだってもう子供じゃねぇんだから、そんなお節介いらねーよ。」
「ならばお前が気付いた時点で言ってやれ。そもそも、日頃からお前が正則を甘やかすからこのようにだらしなく育ってしまったのだろうが。
デカい図体をした貴様らが妙に仲の良い姿は、非常に気色が悪いのだよ。」
「甘やかしてなんかねぇよ。つーか、変な言い方すんな馬鹿!」



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