school daysA

 「お前の方は、単位は大丈夫なのか?」
 清正の紙パック入りコーヒー牛乳を勝手に飲みながら、三成が問う。
「俺は計画的に休んでるからな、出席日数に問題は無い。」
「計算してるのか……。それくらい真面目に勉強したらどうだ?お前はやれば、まぁ…出来ないことはないだろう?」
 三成からコーヒー牛乳を取り返し、それを一気に飲み干してから清正が一言、答える。
「面倒臭ぇ。」

 清正は、決して勉強が出来ない訳ではなかった。三成の言う通り、真面目に勉学に励んだならばきっと学年でもトップクラスの成績を誇るだろう。そんな頭を持っているから大して勉強をしなくても定期テストでは平均点ぐらいは取れるし、出席日数もギリギリだが足りている。なので彼は、正則と違い進級には何の心配も無いのだった。




 「……お前が留年すればいいのに。」
 清正がぽつりとこぼした言葉を、三成が聞き逃すはずも無い。
「何を言う。そんなことは天地がひっくり返っても有り得んな。」
 勿論、常に学年一位の成績優秀者であり、生徒会役員でもある三成が留年だなんて有り得ない。だが清正は続ける。
「お前が卒業してから一年間、どうやって過ごしゃいーんだよ。お前がいないならこんなとこ、来たくねぇ。」
「……清正…。」
 本音を口にしてしまったものの、やはり恥ずかしいのか清正はそっぽを向いてしまった。そして乱暴に焼きそばパンをかじる。そんな意外な可愛らしさを見せた清正の頭を、三成はくしゃりと撫でた。
「一年くらい我慢しろ、馬鹿。」
「何だよ、お前は平気なのかよ。」
 三成の返答に口を尖らせる清正。
「家も近いしいつでも会えるだろう?それよりお前、今のまま呑気でいていいのか?」
「は?」
 ふふん、と不敵な笑みを浮かべる三成に、清正はぽかんとする。
「俺が目指すのは難関大学だぞ?卒業後も俺と一緒にいたいのなら、もっと勉強しないとダメだな。今のお前の成績では同じ大学は無理だ。」
「おっまえ…っ!」
「俺の学力レベル、知らん訳はないだろう?」
 言いながら三成は、今度は清正の手にある焼きそばパンにかじりついた。そのとき、昼休みの終了と五時間目の開始を知らせるチャイムが鳴り響いた。
「ああ、もう行かないとな。遅れてしまう。」
 教室に戻ろうとする三成の手を清正が掴む。

 「……分かったよ、真面目に勉強する。

ま、それは明日からな。だからお前も、今日はサボっちまえ!」
「何が“だから”なのだ!意味が分からん!」
 三成はその手を振りほどきたいが、なにぶんここはあまり広くない貯水タンクの上だ。暴れては危ないので思うように抵抗できない。
「ほら、お前の好きな苺ロールやるから。」
 清正はコンビニの袋から菓子パンを出し、三成に差し出すと、彼はそれを渋々といった体で受け取った。
「……今日だけ、特別だからな…。」
 その返事に清正はニカッと笑って見せて、三成を抱き寄せた。






 隠れるものは何も無い、屋上の貯水タンクの上。しかし誰も見てはいないその場所で、二人はこっそりキスをした。





   ―終わり―



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