school days

 昼休みを告げるチャイムとほぼ同時に、三成は教室を出た。向かう先は一つ、屋上だ。階段を駆け上がって、屋上へと繋がる金属製のドアを開ける。

 「清正、正則!お前達また授業をサボったらしいな!」
 三成が怒鳴りながら貯水タンクの上を見上げると、ひょいっと彼の一つ年下の幼馴染み二人が顔を覗かせる。学校指定の制服をきっちりと着ている三成に対し、その二人は大分着崩して制服を着用していた。
「何らよ頭れっかち!お前までうるへぇなぁ!」
「正則、パン食いながら喋るな馬鹿、汚ねぇ。
んで三成、何でお前がそんなこと知ってんだよ?」

 加藤清正と福島正則。この二人は、少々素行が悪いことで校内でも名が知れていた。喧嘩はするし、学校に来ない日もあるし、サボりや早退などは日常茶飯だった(いたずらに物を壊したり弱い者に絡んだりなど、悪質で頭の悪い真似はしないのだが)。今回の三成の指摘に対しても、悪びれた様子など無い。
「貴様らの担任が俺に泣き付いて来たのだよ。」
「あのまろめ、余計な真似しやがって。」
 今正則が言った「まろ」とは、清正と二人の担任で、古典担当教諭の今川義元のあだ名であった。その教師はなかなかマイペースな性格である意味大物っぽい(?)人物ではあったが、この問題児達には流石に手を焼いているようだ。
「それと正則、日本史の毛利先生と数学の竹中先生が呼んでいたぞ。そろそろ単位がヤバいらしい。」
 三成が溜め息混じりに伝えると、
「うぉおい、それを早く言ってくれよなー!留年だけは勘弁だぜ!!」
 正則は貯水タンクから飛び降りて、一目散に職員室へと走って行った。食べかけのコロッケパンを片手に。
「「………忙しない奴だな。」」
 バタン!と大きな音を立てて閉まった扉を見ながら、その場に残された二人が呟く。




 「おい三成、そんなとこに突っ立ってないでお前もこっちに来いよ。日当たり良くて、あったかいぜ。」
「俺は煙でも馬鹿でも無い。別に高い所は好きではない。」
 タンクの上へと手招きする清正に、三成はふん、と吐き捨てる。
「何だ、登るのが怖いのか?」
 清正がにやりと笑うと、違う!怖い訳があるか!と三成がムキになって反論した。
「じゃあ上がって来いよ。眺めもいいぜ。」
「ぁ、ああ……。」

 一段一段、ゆっくりと梯子を登る三成(清正が上から手を貸そうとしたが、無視をする。彼はプライドが高いのだ)。
 別に大したことでは無いが、何だか幼馴染みに混ざって少しだけ、悪いことをしている気分になった。



 丸みを帯びているタンクの真上に腰を下ろすと、清正の言う通りとても眺めが良かった。町全体が見渡せて、どこまでも澄んだ青空が広がって。遠くに見える山々は、ちょっと時季が過ぎかけではあるものの紅葉して赤や黄色に染まっていて、まだまだ美しかった。
「……確かに、悪くはない。」
 ほぅ、と隣りで息を吐く三成を見て、清正は満足そうに笑った。



[ 11/15 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -