honey×1(学パロ、佐・幸×三)
※『本命は、甘くない』の続編です。佐・幸×三編。三成が佐助とも幸村とも付き合っているので注意して下さい。そしてちょっと下品な部分があるかも知れません。
「私の本命は、甘くないぞ。」
そう言い残して去って行った三成の背中を見送って、佐助と幸村は顔を見合わせた。もらったチョコの包装紙は二つとも同じ色をしていて、二人の口の中に広がるのは香り高くほろ苦いカカオの味。
「これ、ビターチョコだ。」
舌先で丸いチョコレートを転がしながら、先に口を開いたのは佐助だった。
「俺のも、苦い……。」
そして幸村も、チョコの苦味にわずかに顔をしかめてそう言った。
…そう、二人とももらったのはビターチョコレートであったのだ。
「「どーゆーことだ!?」」
翌日、二人はまたしても放課後体育館の裏に三成を呼び出した。チョコレートに込められた彼女の真意を探るためだ。佐助と幸村が少し険しい顔をして三成を見ていることと、すぐ近くの草むらで野良猫が昼寝をしていること以外は、まるで昨日のデジャヴだった。
「お嬢!」
「三成殿!」
「「昨日のチョコ、あれは一体どういう意味!?」でござるか!?」
二人は仲良くハモり、単刀直入に切り出した。だが三成は状況が飲み込めないのか、首を傾げるだけで。
「あれを返事に代えるって言ったけど…。」
「某のも佐助のも、二つともビターチョコでござった。我らの告白に対しどうお返事を下さったのか分からず、再びそなたを呼び出した次第でございます。」
少し丁寧な説明を受けて合点がいったのか、三成は「ああ」、と頷いた。そして観念したように、ゆっくりと口を開いた。
「実は以前から、貴様らが揃って私に好意を寄せていると孫市や鶴姫に言われていて……。」
「え、バレてた!?」
男二人は気持ちを隠しているつもりだったので、周囲に悟られていたことに驚いた。女子はそういうことに関しては、本当に聡いのである。
「きっとバレンタインに告白して来るだろうから、返事を考えておくように、とまで言われた。」
見え見えだったのか、と恥ずかしくなり幸村も佐助も顔を赤らめたが、今はそんなことよりも三成が考えた返事の方がずっと気になる。二人は彼女をじっと見詰めて、続く言葉を待った。彼らの視線に居心地の悪さを感じたのか、三成は下を向いてしまった。相手が誰であろうとも対峙した者を真っ直ぐに見据える彼女にしては、それは珍しいことであった。
「正直に言う。私は、貴様らのどちらも好ましいと思っている。猿飛か真田か、と言われたら選べない。だからは私は、貴様ら両方に苦いチョコレートをくれてやったのだ。」
昼寝をしていた黒猫が伸びを一つしてからどこかへと行ってしまったが、その場に残された三人は誰一人としてそのことに気付かなかった。
「私はしゃあしゃあと『どちらも好きだ』などとのたまう最低な人間だ。こんな輩にはさっさと見切りを付けるのが自らのためだぞ。」
三成は顔を上げると自らを嘲笑するかのように口元を歪めた。そうして昨日と同じように二人に背を向け歩き出そうとしたが、それは叶わなかった。
幸村の腕の中へと、閉じ込められてしまったせいで。
「真田、離せっ!!」
「嫌でござる!!」
「くそ、猿飛まで!貴様ら、私の話を聞いていなかったのか!?」
三成は力いっぱい暴れたが、佐助と幸村の二人掛かりで押さえ込まれてはなす術も無い。
「聞いてたさ!だから離してやれないんだ!
…面と向かって好きだって言われて、諦められる男がいると思うの?」
「それが三成殿の本当の気持ちならば、某達には受け入れるより他の選択肢はありませぬ。包み隠さず話して頂けたこと、感謝致す。」
「俺様も真田の旦那も、アンタのそんな馬鹿正直なところが好きなんだよ。」
予想していなかった二人の反応に、三成は抵抗をやめてしまった。
彼女は、幸村にも佐助にも嫌われるつもりでいたのだ。二人とも大切で、どちらか一人を選べないのは事実で。だから最低な答えを出して、あちらの方から離れて行ってもらおうとしたのであった。
しかし、そうはならなかった。その目論見は看破されてしまったのだ。自分の答えに対する二人の想定外の返答に、三成は戸惑った。そして、自分が深く愛されていたことにようやく気が付いたのだった。
「三成殿に謀り事は向いておりませぬ。」
「そーそー。」
三成の瞳に涙の幕が張ったのを、幸村と佐助は見逃さなかった。
「もう、三人で付き合っちゃおうよ。」
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