甘くない彼女の甘いお返し(学パロ・幸三)


※『本命は、甘くない』の続編です。






「私の本命は、甘くないぞ。」

そう言い残して去って行った三成の背中を見送って、佐助は口の中に広がるミルクチョコレートの甘さを、味覚とは裏腹に苦々しく思った。

(ふられちゃったか……。)

ふぅ、と溜め息を一つ吐いて横にいる幼馴染を見遣れば、涙を流しながら口元を押さえていた。加えて言うなら、生まれたての子鹿のようにぷるぷると震えている。

「旦那、どうしたの!?」

まさか、二人して玉砕!?
失恋の涙かと思いきや、幸村が泣いている理由は別にあった。

「に、苦い…っ!苦いでござるぅ!!」

…そう。三成からの本命チョコをもらったのは幸村だった。
しかし、そのチョコレートはカカオ含有率が75%の物で、味覚がお子様である幸村には苦過ぎたのであった。

「舌が…痺れる…っ!」
「あぁ〜もう…。ほら、俺様のど飴持ってるから口直しにコレ食べな。」
「それはスースーするから嫌いだ…。」
「お子ちゃまが過ぎるわ!!」

世話が焼ける幼馴染に、佐助は失恋の感傷に浸る暇さえ無かった。
だが、

(真田の旦那と石田のお嬢なら、応援できるかも知れないな…。)

そう思ったのも事実であった。

「お嬢のこと泣かせたらブン殴るからな!!」

佐助はそう言うと、昇降口の近くにある自販機へと走って行った。何でもいいから、甘いジュースを買うために。



晴れてお付き合いをすることになった幸村と三成だったが、恋愛事には超の付くほど奥手な彼氏と、これまた恋愛事には超の付くほど淡白な彼女。進展などは到底有り得ず、『手を繋ぐ』というミッションさえも成功せぬまま、交際一ヶ月となる日を迎えたのだった。奇跡的に清い男女交際である。

あの、告白騒動(?)から一ヶ月ということは、今日はホワイトデー。これまたリア充達が浮かれる日であったが、三成と幸村は、そうではなさそうだった。
何かと律儀な三成は、先月にもらったチョコのお返しを丁寧に配って回っていた。その傍らには当然幸村がいたのだが…。最後に鶴姫にピンク色の包みを渡し、三成が持っていた有名洋菓子店のオシャレな紙袋は空になった。
なんと、幸村の分が無かったのだ。

「三成殿……某の分は…?」

何ももらえなかった幸村は、落胆の色を隠しておずおずと三成に催促をした。これとは別に、何かあるのかも知れない。

「持って来ていない。」

ーガーン!!

彼女の一言に、そんな音が聞こえそうなくらいに幸村はショックを受けた。

目の前で、佐助にお返しのプレゼントを渡しているのを見たのに!佐助とは、一緒にチョコを作って告白したのに!そしてOKしてもらったのは自分なのに!

幸村はキノコでも生やしてそうなほどのどよ〜んとしたオーラを纏って、一日を過ごしたのであった。




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