本命は、甘くない(学パロ・佐+幸→三)


聖バレンタインデー。
それは、チョコと一緒に溢れる想いを伝える日。お菓子の甘ぁい香りに、女の子が勇気をもらえる魔法の日……。



…ばかりではなく。
近年では、『女性から男性へ一方通行的贈答』という日本のバレンタイン特有の考え方もそう固定的では無くなり、『男性から女性へ』といういわゆる『逆チョコ』に想いを託す男性も少なくは無くなって来た。能動的であれ受動的であれ、バレンタインデーは恋する男性達にとっても、特別な意味を持つ日なのである。

2月13日の夕方、明日の決戦に向けて準備を整えている少年がここにも。
真田幸村は、生まれて初めてのお菓子作りに挑戦していたのだった。

「佐助ぇ〜!!うまく混ざらぬぅうう!!」
「小麦粉は振るってから入れた?あーあぁ〜…。ダマになっちゃってるじゃん!」

幼馴染である猿飛佐助の家で、何かと器用な彼の力を借りながら。

「これではダメか?しゃしゅけぇ……。」
「まぁ、ダメってほどでも無いよ。大丈夫。」

砂糖に卵、小麦粉とベーキングパウダーの入ったボウルを抱え、涙目になっている幸村を佐助はよしよしとなだめた。

「しっかし、旦那がまさか逆チョコを贈りたいだなんてねぇ…。」
「べ、別に俺は!日頃お世話になっている感謝を伝えようと思って…。それだけで、他意など無い!!」
「ふぅん〜。」

恋愛事に関しては超が付くほどの奥手である幸村が、バレンタインなどといったイベントに興味を持つことは奇跡であった。佐助は、弟のような幼馴染の成長を嬉しいと感じる反面、彼の片思いの相手を思うと、それを素直に喜べないのであった。
何故ならば。

「お前だって、何か作っているではないか。それは何だ?」
「これはフォンダンショコラ。旦那の作ってるマフィンと材料が似てるからね。残った材料を使って俺様も便乗。」
「誰か意中の相手に?」
「うん。明日石田のお嬢に告る予定。」

面倒なことに、佐助も幸村も、同じ相手を好きになってしまったからであった。

「な、な、なななな、なんだとぉおおおおお!!?」

幸村は、同じクラスの石田三成が好きだと誰にも伝えたことは無い。だが、佐助にはバレバレで。佐助も佐助でそのことに気付かない振りをして、かつ自分の気持ちを他人に悟らせることは無かった。
ちなみに、二人に想われている罪な女・三成は、壊滅的に鈍かった。よってこの三角関係に気が付いているのは佐助のみなのである。

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