酒宴、酒乱!(西軍×三成)


 ※愛され三成ちゃん。がっつり(?)総受ですので苦手な方はご注意下さい。






 「誰ぞ……三成に酒を飲ませたのは……。」
 吉継が燃え盛る炎のようなオーラを纏い、阿修羅の如き形相で元親、幸村、佐助、元就の四人を睨み付けた。
「三成は、猪口の一杯…いや、一舐めしただけでも酔ってしまう下戸よ!誰が与えた!!!」
 吉継の大声に空気が震える。いつも不気味な様子で瞳を光らせ、一体何を考えて、何を企んでいるやら分からない吉継。そんな彼がここまで憤っているのを、吉継と親交のある元就を始め、四人は初めて見たのだった。吉継の恐ろしい剣幕に、全員が言葉を失くす(幸村に至っては、驚いて固まってしまっている始末だ)。
 だが、そんな緊迫した雰囲気をぶち壊したのは三成の声。
「刑部、刑部〜!」
 三成は吉継の輿によじ登り、彼に抱き付いた。
「ぎょおぶ〜…。」
 彼女は吉継の肩口に顔を埋め、額をぐりぐりと押し当てて子猫のように甘えた。声の調子もいつもの凛とした声色ではなく、酔っているせいなのか、少々鼻にかかった、少女のような声を出している(元々三成は年若い娘なので平時であっても「少女のような」と形容しても何らおかしいことはないのだが、本人がそれを非常に嫌がった)。
「三成よ……。誰に飲まされた?」
 吉継が三成の銀色の髪をさらりと撫でると、彼女はくすぐったそうにほほ笑んだ。
「ふふ、私が自分で飲んだ!皆が楽しそうに飲んでいたから!」
 三成は、きゃははきゃははと笑いながら親友に戯れつく。
 ……酔うと三成は、無邪気な甘えたになるのだった。
 それだけならばまだ良かった。吉継が目の色を変えてまで三成の飲酒を止めるのには、別の理由があるのだった。
「刑部〜っ!」
 吉継に抱き付いていた三成が、包帯の上から彼の頬にちゅっちゅっと何回もキスをした。
「お、おいっ!?」
「破廉恥っ!!」
 それを見て元親と幸村が思わず声を上げる。


 そう、三成はアルコールが入ると、甘えん坊のキス魔になるのだ。


 これが、吉継が三成に酒を飲ませたくない大きな理由であった。



 「大谷の旦那と石田のお嬢って、やっぱりそんな仲だったの!?」
 佐助が二人を見て、ちょっと衝撃を受けたように言う。
「そんな仲とは?」
 三成が吉継の輿から飛び降り、佐助のすぐ側に近寄って来た。彼女は酔っ払っているのだが、摂取したアルコールの量がごく僅かなため酒臭さなど微塵も感じない。むしろ、着物に薫き付けられた香の良い香りがするほどだった。その匂いが、佐助の鼻腔をくすぐった。
「い、いや……お二人は男女の仲なのかなぁって…。」
 琥珀色の瞳でじっと間近で見詰められて、佐助は気恥ずかしさで数歩後退りをした。
「違うぞ猿飛!私と刑部はそんな下劣な関係ではない!!」
 空けられた間合いを一気に詰め、三成は佐助にがばっと抱き付いた。
「貴様は下世話なことばかり…。うるさい口などこうしてやる。」
「おじょ…っ、んんっ!?」
 佐助の口を、それ以上言葉が紡げないよう三成が塞いだ。…己の唇で。
「「あああぁ〜!!?」」
 それに対しまたリアクションをしたのは元親、幸村。元就は何も言わないが、眉間にシワを寄せて不愉快そうな顔をしていた。数秒間触れ合った唇を離すと、三成は妖艶に笑った。
「これに懲りたら、出過ぎた真似は止せ。貴様は忍だ。」
「……差し出がましい真似、俺様またしちゃうかも。」
 佐助は締まりのない顔で、甘えてくる三成を抱き締めた。…途端、後頭部に尋常じゃない衝撃を受けた。
「破廉恥でござらぁあああ!!!」
 幸村のローリングソバットが見事決まったのである。その場に崩れる佐助。三成が一緒になって転ばないよう、元就が着物を引っ張り、それとなく彼女を救助した。そのまま三成は、元就にしなだれた。
「毛利、うるさいと言えば貴様もだ。刑部にまで文句を言って!」
「ふん、どちらがだ。寡黙こそが貴様の唯一の褒められる点であったが、今宵は鬱陶しいほどよく喋る。」
 元就の不遜な物言いに三成の眉が釣り上がる。
「…だが、貴様の小娘らしい面を見れたのは愉快だな。」
 ふ、と僅かに笑みを零した元就に、三成の怒りは一気に引っ込み、逆にぽかんとしてしまう。
「ぅわ、毛利が笑いやがった!明日は槍が降るぜっ!!」
 それを見て、元親は大袈裟に身震いした。馬鹿にされているぞ、と笑いながら、三成は元就の鼻に頬にとキスを落とした。
「……普段からこれくらいの可愛げを見せよ。西軍全体のためにもな。」
 そう言うと元就は、三成を突き飛ばし部屋を出て行ってしまった。
(照れていやるな。)
(照れておりますな。)
(照れてるねぇ。)
(照れてやがるな。)




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