某の彼女は(幸三・現パロ)


 ※毎度お馴染み高校生設定。三成、幸村、元親は同じクラスです。出番はありませんが吉継は三成の義兄で社会人。






 今日は、三成との初めてのデート。幸村は昨晩から緊張しまくり、ろくに眠れず約束の時刻の三時間も前から待ち合わせ場所にいた。することも無いので、彼はまだ人影も疎らな駅前の噴水広場でストレッチやスクワットなどの軽い筋力トレーニングを始めた。その間、昨日幼馴染みから受けた助言を思い出す。
 「まず服装や髪型を褒めること」「車道側は男が歩くこと」「かさ張る荷物は持ってあげること」…などなど、恋愛スキルが極端に低い幸村に、女の子を不愉快にしないための心得を佐助は一から教え込んだのだった。ちなみに、今日のデートのプラン(映画+ショッピング)を考えたのも彼である。佐助は、現在公開中の映画のリスト、ランチにお勧めのお店などが書かれたメモ、更には失敗しないようにシチュエーション別にカンペまで用意してくれた。幸村は彼の頼もしさに感服しきりであった。



 「はっ!三成殿にお会いする前から汗だくに…っ!不覚!!汗臭くては嫌われてしまう〜っ!!」
 熱心に(周囲の人が軽く引くほど)筋トレに励み過ぎたせいで、幸村は汗だくになっていた。汗染みができていたらどうしよう、と自分のシャツを確認するが、最早「汗染み」どころの騒ぎではないほど彼の服は湿っていた。時計を見ると9時50分。待ち合わせの時間まであと10分だ。
「着替えに戻るほど時間はないし……。い、いかにするか…っ!」
 暑くなって途中で脱ぎ捨てたフルジップタイプのパーカーを取りあえず羽織り、一人でおろおろする幸村。そんな彼に、背後から黒い日傘を差した少女が声を掛けた。
「真田、随分と早いな。」
 少女の正体は、待ち合わせの相手。幸村の生まれて初めての彼女、石田三成だった。
「三成殿!」
 三成はパフスリーブの真っ白なブラウスに黒の棒タイ、フリルたっぷりの黒いハイウエストのミニスカートと、同じく黒色のニーハイという服装だった。靴は真っ赤なパンプスで、全体がモノトーンで統一された中足下の赤色だけが際立って見えた。また、レースのあしらわれた日傘が、今日の三成の格好のゴシック色を更に強くしていた。ついでにこの日傘は、三成の義兄の吉継がプレゼントしてくれたものだった(彼女は紫外線に弱く少しの日焼けで皮膚が腫れたり爛れたりしてしまうので、四月、五月の段階から日傘が手放せないのである)。
「お、おはようございます…っ!」
 幸村は、三成があまりにオシャレで、正直気後れしてしまっていた。パーカーとTシャツにジーンズ、それにスニーカーという自分の出で立ちと比べると、横に並ぶのさえ憚れるような……。一応、この赤いTシャツは一番のお気に入りではあるのだが。
「貴様はさっきからピョコピョコと何をしていたのだ?面白いからしばらく観察してしまったが。」
 余程幸村の行動が面白かったのか、三成はくすくす笑っていた。その様子を見て、幸村の沈んでいた気持ちが浮き上がる。
「暇でしたので筋トレを!先ほどは片足スクワットをしておりました!」
 笑顔でそう答えると、一日が始まる前から疲れ切るなよ、と三成がハンカチで汗を拭ってくれた。ふわっと香る大人っぽいパフュームの香りに、幸村は頭がくらくらした。



 早速映画館へと向かった二人。カツン、カツンと三成がヒールを鳴らす度に、周りの男が彼女に視線をやっているのではないと幸村は気が気ではなかった。しかも三成は背が高いので、今日のように踵が高めの靴を履かれると、自分と身長差があまりなくなってしまう。それもまた何だか情けなくて、彼は三成のモデルのような体型をほんのちょっぴり恨めしく思った。
 だが、せっかく大好きな人が隣りにいるのだ。余計なことを考えるのはよそうと幸村は三成に向き直る。
「三成殿、何か観たい映画はありませぬか?」
 幸村はポケットから取り出した映画のリストを読み上げた。有名な賞を獲得した洋画から、最近話題の若手俳優を起用した青春ドラマまで様々なジャンルの映画が上映中らしい。ただ今世間はゴールデンウィークの真っ直中で、この連休に合わせて公開された映画も多い。あまり映画館には来ない幸村だったが、どうして佐助が映画を勧めてくれたのか分かった気がした。少々無難過ぎる気もするが、その分リスクも少ないだろう。だが三成は、
「…特別興味のあるものはないな。貴様が観たいものを観ればいい。」
 と素っ気ない返事をした。
(ラブストーリーもちょっと恥ずかしいしアクションも何か違う気がする……。と言うか洋画はラブシーンが必ずあるから破廉恥でござるっ!)
 …結局、幸村は国民的アニメの劇場版を選択した。



 「三成殿、楽しかったでござるか?」
 自分は楽しめたけれど、アニメだなんてこの方には低次元過ぎただろうか…。幸村は、彼女の顔を覗き込むようにして問い掛けた。
「……貴様はどうだ?楽しめたか?」
「そ、某は楽しめましたぞ!面白かったと思いまする!」
「そうか。なら、いい。」
 幸村の答えに、三成は満足げに小さくほほ笑んだ。「何か立場が反対ではないだろうか?」と思いつつも、彼女が笑ったので幸村も嬉しくなって笑った。




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