わんわん!A


 あれから数日が経過したが、幸村の耳と尻尾は消えなかった。しかし、三成と幸村はこの状況を楽しんでいるようだった。幸村は首輪とリードのようなものを付け、三成はその紐の先端を輪にして握る。そうやって二人でアハハウフフと散歩に出掛けたりしていた(それを目撃した家臣や侍女達の間では、「三成様と幸村様の新たなお戯れ」と密かに話題になっていた)。二人は夜も一緒、ということも珍しくはなく、佐助は「わんわんプレイ!?」と勘繰っては下世話な想像をしていたのだった。
 「大将、今日はお嬢と何して遊んでたの?こんなに着物汚して…。」
 泥だらけになって帰って来た幸村に、佐助が苦笑いを浮かべながら問い掛けた。
「今日は、“三成殿が投げた刀の鞘を俺が走って取りに行く”、という遊びをしていたぞ!」
「それはそれは……何とも悪趣味で高度な遊びだこと…。」
「きちんと鞘を拾って帰ると、三成殿がよしよしして下さるのだ!楽しかった!」
 そう尻尾を振りながらに話す主に、あは、あはは…と乾いた笑いを返す以外に佐助に可能なことはなかった。



 「お嬢、大将〜!良い知らせが……!」
 佐助が三成の私室を訪ね、襖を開けると、そこには三成に膝枕をしてもらいながら彼女に甘えている幸村の姿があった。三成は三成で、彼のぴこぴこ動く尻尾を掴んだり撫でたりして遊んでいるようだった。
「佐助、どうした?」
「猿飛、入室の許可くらい取れ。」
 佐助に見られたからといってどうと言うことはないのか、二人は離れる気配はない。幸村は三成の胸に顔を埋めたりうなじの匂いを嗅いだりと、好き放題やっているように見える。佐助は目眩を堪えながら話始めた。
「いやぁ……。あのね、俺かすがや小太郎なんかから色々話を聞いて来て…。未完成の術が原因な訳だから、その耳と尻尾は放っときゃそのうち無くなるだろうってさ。良かったね。」
「「何だと…っ!?」」
「何で二人揃って残念そうな顔するんだよ!!」



 それから二日後。本当に幸村の犬耳と尻尾は、キレイに無くなった。



 だが。

 「真田、取って来い!」
「合点!!」
 二人は、相変わらず“悪趣味で高度な遊び”(三成の投げた鞘を幸村が拾いに行くアレ)に興じていた。首輪とリードを付けている日もあるし、あれから二人の様子…言うなれば、「主人と犬」と言った構図は、まるっきり変わっていないのだった。ひょいと顔を見せた元就に、「石田も良き駒を得たものだな。」と言われたのに対し、「これは駒ではない。私の犬だ。」「わんでござる!」と二人で言い返していたのにはその場にいた全員が言葉を無くした(吉継と元就だけは高らかに笑っていたが)。
 本人達が幸せならいいかなぁ、と遠巻きに幸村と三成を眺めつつ、佐助は痛むこめかみを押さえたのだった。

 「三成殿〜、よしよしして下され〜!」
「馬鹿者、どこに触っている!くすぐったい!」




   おしまい!




- 16 -


[*前] | [次#]
ページ:






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -