石田三成の長い白い日A


 「三成殿ー!おはようございます!!」
 三成が教室に入るやいなや、千切れんばかりに尻尾を振った大型犬が飛び付いて来た。
「真田、おはよう。朝から元気の良いことだな。」
 大型犬…もとい幸村にへばりつかれたまま、三成は挨拶を返した。
「三成殿、これを受け取って下され!」
 幸村が目の前に出して来たのは、ペールブルーの包装紙に包まれた正方形の箱。
「ホワイトデーのプレゼントでござる!」
「…中身は何かと聞いてもいいか?」
「無論!クッキーとキャラメルティーの茶葉と、マグカップでござる!」
「……随分と、貴様らしくない品物だな。」
「やっぱり分かり申すかぁ…。実は佐助に教えてもらった店で買ったのでござるよ。某では女子が喜ぶものというのが、全然分からなくて……。佐助に助言をもらったりして、選ぶのを手伝ってもらったのでござる。」
 ちょっと恥ずかしそうに頬を掻く幸村を見て、そういうことか、と三成は合点がいった。
「そのマグカップは某と佐助と三人でお揃いなのです!三成殿が藤色、某が赤色、佐助が深緑色と色違いで揃えさせて頂き申した!」
「そうか。そうまでしてくれるとはな…。礼を言う。」
 一生懸命選んでくれたであろう贈り物を胸に抱き締めて、三成は少しだけ背伸びをして幸村のふわふわした頭を撫でてやった。

 「おいおい、朝っぱらからやけに仲良しじゃねぇか!」
 二人に声をかけて来たのは元親だ。
「おはようございます!」
「長曽我部か。今日は遅刻しなかったのだな。」
「んな毎日遅刻してるみたいに言ってくれんなよ石田ぁ〜。」
「長曽我部殿は三日に一度は遅刻してるでござるよ。」
「お、それを言われちゃ敵わねぇな!」
 はははは!と笑っている元親と幸村を見て、軽口を言い合える友人と言うのもいいものだと三成も笑みを零した。
「そーだそーだ、石田これ!ホワイトデーのお返しだ。」
 元親は、ピンク地に白いのレースが印刷してある、おおよそ彼に似つかわしくない小振りの紙袋(ピンクのサテンのリボン付)を三成に手渡した。
「何か人気ある店らしーじゃねぇかそこ。よく分かんねぇけどお前に似合いそうなネックレス売ってたから。」
 三成はそれを受け取ると、印刷された店の名前とピンクと白がメインカラーのアクセサリーショップの記憶を辿る。
「…あの、駅の近くの店で買ったのか?」
 思い出したその店は、先日大幅な改装を終え新たに開店したばかりでクラスの女子が可愛い可愛いと騒いでいた。三成も何度か店の前を通ったことがあるが、ファンシーでラブリーな雰囲気で、いつも女子中高生で混み合っている。あんなところへこんな屈強な男が行ったと言うのか。
「ああ。レースやらフリルやらリボンやら大層な店だったなぁ。でも安心しな、それ割とシンプルなヤツだからよ。」
 可愛く着飾った女の子達を押し退けて買い物をする元親を想像して、三成は思わず吹き出した。それから笑いの収まらぬまま、「大事にする」と元親に伝えた。その返答に気を良くした元親は、ひょいと三成を抱き上げた(小さな子どもにする、高い高いのように)。

 昼休みになって、佐助が三成のクラスにやって来た。
「お嬢、はいプレゼント!クッキー焼いて来たんだ。」
 佐助のお返しは手作りクッキーらしい。つくづく器用な男である。
「お前には先月にチョコレートをもらったはずだが……。」
 ぱちぱち瞬きをしながら、渡された品と佐助を交互に見る三成。
「あれはあれ、これはこれ。クッキーおいしかったよ!」
 佐助はニッカと笑って言う。
「そうか。ならば……。
猿飛、手を出せ。」
 ごそごそとブレザーのポケットを探り、彼女は佐助の手の平にいちごミルクのキャンディを載せた。ころりと転がるまぁるいそれ。
「これを私からの礼に代えよう。あの抹茶のチョコ…まぁ、悪くはなかった。」
 三成の無自覚の可愛らしさに、佐助は何だか堪らなくなってしまった。
「………ねぇお嬢、俺様と付き合ってくんない?」
「別に構わないが?」
「マジで!?」
「「待て待て待て!!」」
 佐助の勢いに任せた告白(?)に、黙っていられないのは幸村と元親だ。物凄い勢いで二人の間に割って入って来る。しかし。
「どこまで行くんだ?特別について行ってやろう。」
 三成には真意が伝わっていなかった。
「……お嬢、そうじゃない…。」
 がっくりと落とされた佐助のその肩を、元親がポンと叩いた。





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