石田三成の長い白い日(西軍×三成)


 ※こちらは、バレンタイン企画「Happyhappy,valentine!」の続編です。愛され三成のホワイトデー。






 3月13日の日曜日、三成は養い親である秀吉・半兵衛と共にショッピングに出かけた。特別欲しいものがあった訳ではないが、敬愛する二人からの誘いを断るなどするはずもなく。目的が何であれ、三人でのお出かけは彼女にとって至福の一時であった。年頃の女の子らしく、三成は目一杯おしゃれをして家を出たのだった。
 向かった先は最近できたばかりの商業施設。広大な敷地にたくさんのブランドや専門店が建ち並び、ちょっと北欧を意識してあるような、雰囲気の良いショッピングパークだった。そこで半兵衛は、三成に大きなゴリラの縫いぐるみを買い与えた(抱えねばならないほどの大きさのそれは、少々秀吉に似ていた。)
「バレンタインのお返しだよ。」
 そう言って見せた半兵衛の妖艶な笑みに、三成はノックアウト寸前だった。彼女は頬を紅潮させながら、とても気に入りましたとそのゴリラを抱き締めた。それから、同じく秀吉には十万円以上もするブランドのバッグをお返しにとプレゼントされ、三成は恐縮しきりだった。ほんの気持ちに過ぎんと言う秀吉に対し、三成は
「秀吉様、私はこれを生涯の宝にします!」
 と感激のあまりに瞳を潤ませながら宣言した。
「ならばもっと高価なものが良いだろう。」
「そうだね。」
 そう言ってまた品定めを始めようとする両親(?)を、娘は慌てて止めた。超お金持ちの秀吉・半兵衛両氏の金銭感覚は一般からはかなりズレているのだ(ついでに、秀吉はチョコの礼にと半兵衛にも高級ブランドの腕時計を買っていた)。ホワイトデーとはかくもここまで恐ろしいイベントだったかと、秀吉の出す金色に輝くカードを見ながら三成は目眩をこらえたのだった。



 その翌日、3月14日。
「おはよう、三成。」
 玄関前で吉継が待っていた。
「おはよう刑部。迎えに来てくれたのか。」
 いつも二人は通学路の途中で待ち合わせているのだが、今日は吉継が家まで来てくれていた。それが嬉しくて、車椅子に乗った親友に三成は笑顔を見せる。
「何、今日は特別な日ゆえ。ほれ、先月のお返しよ。」
 吉継が差し出したのは小さな紙袋。包装されていたので中身は分からなかったが、それに印刷された店名は三成の大好きな洋菓子店。
「生ものだからな、家で渡してしまえば悪くせぬだろうと思ったのよ。
…それに、本日一番にお返しをしたかったというわれのわがままもある。」
 くくっ、と喉を鳴らして笑う吉継からお菓子を受け取ると、三成は礼を述べてから少し照れくさそうにして、年相当に可愛らしく笑った。

 「毛利。」
 登校の最中、二人は元就に出会った。
「大谷に石田か。良いところで会ったな。」
 三成達の顔を見るなり、何やら鞄をあさり出す元就。
「石田、これをくれてやろう。」
 鞄から出したそれを、元就は三成に押しつけた。
「……何だこれは。」
「先のクッキーの礼だろう。」
 怪訝な顔をする三成に吉継が教えてやる。
「言わねば分からぬか、愚か者が。」
「何だと貴様っ!!」
「二人とも抑えよ。
しかし毛利も律儀よなぁ。」
「……我は借りを作るのが嫌なだけだ、他意などない。」
 吉継の指摘に、元就はぷいっとそっぽを向いてしまった。
「ふん、貴様の殊勝な心掛けに明日は槍か、銃火器の類いでも降るのではないか?」
 そんな元就に、三成は先月言われたことをそのまま返してやる。悪態を吐きながらも、緑のドットの包装紙に黄緑色のふわふわしたリボンが愛らしくて、この贈り物のラッピングを解くのが勿体ないと三成は内心思っていた。

 学校に着くと、三成は昇降口で官兵衛に呼び止められた。促されるまま用務員室に連れて行かれると、彼はおもむろに学校指定のネクタイと靴下を数枚差し出して来た。
「バレンタインの礼だ。お前さんは食が細いからな、食いもんよりはこーゆーのの方が良いかと思ってな。」
 それはあまりにも飾り気がなかったが、確かに制服とは消耗品でありもらえるならば有り難い代物である。
「貴様にしてはなかなか気の利いた選択だな。有り難く頂戴する。」
 ネクタイなどを受け取り、三成は目を細めた。その笑顔に官兵衛は不覚にもドキッとしてしまう。
(あ…相手はガキだぞ!こいつの笑顔なんて珍しいもん見たからびっくりしただけだ!)
 そう自分に言い聞かせて官兵衛はぶんぶんと激しく頭を振った。
「とうとうおかしくなったか。」
 相変わらずの不遜な物言いに官兵衛は我に返ると、「小生から物もらったってことは黙っておけよ」と釘を刺してから、三成を部屋から出した。
「ああそうだ。お前さんの担任が呼んでたから、職員室に寄ってやれ。」
 背後から聞こえた官兵衛の声に返事をし、三成はそのまま職員室へと向かった。

 「三成どん、おはよう。今朝も早うに登校して偉かねぇ!」
「島津、何か私に用だと聞いた。」
 朝キレイに梳かして来た髪をぐちゃぐちゃにされてしまったが、三成は頭を撫でる義弘を咎めなかった。
「先月のクッキー、うまかったど!それのお返しを渡したくての。これ。」
 渡された茶封筒の中には、学食や購買部で利用できるチケットが入っていた。それも、結構な枚数。
「こんなに、受け取れない…。」
 三成は困ったような顔をして返そうとするが、義弘は人差し指を自分の唇の前に持って来て、子どもにするような「しーっ」という動作をした。
「みんなには内緒だど!」
 そして、茶目っ気たっぷりに笑ったのだった。




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