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戦車椅子(↑の続き)
吉継が乗っている車椅子には秘密があった。ぱっと見は普通のものと大差は無い。しかし、全自動で高性能な車椅子は多々あれど、彼のそれに敵うものは無いだろう。
何せ、持ち主自ら改造をして、いっそ不要とさえ思える機能を搭載している車椅子なのだ。
「……刑部。また少し車椅子が変形しているな…。訳の分からんモーターに加えて、今度は何を付けた。」
三成が吉継を車椅子ごと眺めながら言う。以前彼は吉継の車椅子を押していて、うっかり変なボタンに触れてしまい後輪の前部から幾本ものトゲが飛び出して来て非常に驚いた記憶がある。しかし、旧友の妙な改造癖にはもう慣れたものであった。
「おお、よく気が付いたな三成よ。雑賀のに頼んでマシンガンを付けてみた。有事の際以外使う気は無いゆえ、変にいじくるでないぞ。」
吉継は上機嫌に返事をしたが、まったく、その「有事」のときが来ないことを祈るばかりである。
「これはな、太閤の戦車をヒントに改良をしているものよ。」
「何…っ!?あの天君をか!?…ああ、秀吉様…っ!」
戦車天君…。戦国の世の頃、亡き主を想い、よく三成は大坂城内を暴走させていたものだった。頬を薄桃色に染めうっとりと浸っている三成には悪いが、何とも物騒な思い出である(彼にとっては天君は回転木馬と同じようなものであった)。
「と言うことはこれは“戦車椅子”…?“戦車椅子刑部”……?」
「やれ、われをも兵器にするでない。」
真実を知った三成は瞳を少年のようにきらきらと輝かせている。確かに火も吹くわ急加速ができるわマシンガンも搭載してるわで凄まじい車椅子ではある。そして銃刀法違反の香りがぷんぷんするのだが、二人ともそれが微塵も気にならないようだった。
(先日見掛けたあの男……。彼奴が真に徳川であったなら、われが此れを以て粉砕してやろう…。)
吉継は、この間町中で見た黄色いスウェットの体躯の良い青年を思い出していた。次はどこをどう改造してやろうかとにやりと笑いながら。
彼の車椅子(最早そう呼んで良いのかすら怪しい)は、憎い相手を思って日に日に殺傷能力を高めていくのであった。
「刑部、お前は将来エンジニアにでもなったらどうだ?」
「そうだな、それも良いかも知れぬなぁ…。」
おしまい☆
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