9/20(石田三成と島津義弘)


 処は大坂城。

 薩摩から赴いていた島津義弘は、遠路の足労を労われ大広間で豪勢な食事を振る舞われていた。義弘は部下達とどんちゃん騒ぎ……とまではいかないが、楽しく酒を飲み交わしながら見た目も美しい料理の数々に舌鼓を打っていた。すると突然、す、と静かに手前の襖が開いた。

 そこにいたのは三成であった。
「おお三成どん!おまはんも食べんしゃいね!」
「…私はいい。腹が減っていない。」
 いち早く気付いた義弘は声を掛けるが、案の定三成は応じない。しかし、何故だか彼の手には立派な陶器の茶碗が大切そうに握られていた。
 それを、三成はずいっと義弘に差し出した。
「鬼島津、茶だ。喉に物など詰まらせるなよ。」
 その茶を押しつけるように渡すと、三成はさっさっと何処かへ行ってしまった。




 「客人にぬし自慢の茶を点ててやるとは、何とも殊勝な心掛けよの三成。……嗚呼そうか、今日は老いを敬う日であったな。」
「うるさいぞ刑部。あの老人に此処で窒息などされたら敵わん、それだけの話だ。」
「分かっておるとも。ヒヒヒッ、ぬしは大層優しい男よ…。」
「………ふん…。」
 にやにやと笑う吉継をよそに、三成は不愉快そうに顔をしかめた(それが彼なりの照れ隠しだと吉継には看破されているのだが)。




 「三成どん、オイはこんなにうまかぁ茶は初めて飲んだど。長生きばしちょるもんやねぇ、はははは!」
 義弘は豪快に笑うと、三成が点てた抹茶を飲み干した。



    ―終―


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