勉強会なんてもんは捗らないA


「拒否する!!」
「お断り致す!!」
「嫌だね。」
「目障りだ。」
「早に消え失せ。」
「みんなこう言ってるからさ、帰って?」

上から、三成、幸村、元親、元就、吉継、佐助。突っぱねの六連コンボを受けても家康は笑顔を崩さない。そればかりか、

「三成、ワシと二人で保健体育の実技の勉強をしよう!」

と、いっそ爽やかに、サラッと変態発言をしたのだった。三成は一瞬にして全身に鳥肌が立った。

「ここにいる連中とならまだしも、誰が貴様なんかとっ!!」

体の大きな元親の後ろに隠れて、三成が言う。若干論点がおかしな気もするが、その発言を受けて幸村達は内心大喜びであった。

「口で言って分からぬのなら、実力行使もやむなしよなぁ…。」

言うが早いか、吉継は最愛の親友のためにどこぞから取り出したソフトボールを家康に向かって思い切り投げ付けた。いや、“投げ付けた”と言うよりは、念力的な何かで“飛ばした”と言った方が正しいかも知れない。

「うわ!?あ、危ないじゃないか刑部!!」

凄まじい勢いで飛んで来たそれを、家康は間一髪のところで躱した。そのボールは、廊下の窓ガラスをブチ破り裏庭へと飛んで行った。

「大体、ゲーム中の数珠の代用品ならバレーボールとかが妥当だろう!?」
「バレーボールよりソフトボールの方が攻撃力が高かろ?…おっと。“ゲーム中”?はて徳川はおかしなことを言いよる。」

吉継の周りには、ふよんふよんとソフトボールがいくつも浮かんでいた。それを不思議に思う人物がここに一人もいないことが、より不思議なことであった。

「やってしまえ刑部っ!」
「言われずとも。」
「ちょ…っ、待て刑部!いて…っ!ぎゃぁあああ!!」

自分目掛けて放たれたソフトボールを何発も喰らい、家康は仰向けに倒れて伸びてしまった。そこですかさず吉継は忠勝を呼び、家康を回収させたのだった。

「刑部!やはり貴様は頼りになる!!」

三成は吉継に駆け寄ると、車椅子ごと彼を抱き締めた。幸村と元親は不満そうな顔をしたが、今日は吉継が一人で大活躍だったのでそれも仕方が無いだろう。



「おまはん達、勉強は捗っちょるかね?」

家康を退散させ、平穏が戻った教室に白いレジ袋を手にした義弘がひょっこりと顔を出した。彼は、三成、幸村、元親の担任の教師である。

「差し入れば持って来たど!」

そのレジ袋の中身は、良く冷えたジュースだった。それを見て幸村は瞳を輝かせて喜んだ。

「有難い!!ちょうど今買いに行こうかと思っていたところでございました!ありがとうございまするっ!」
「じーさん気が利くなぁ。サンキュー!」
「学年違うのに俺様の分もあるんだ?ありがとー♪」

礼を述べる生徒達に、義弘は笑顔を返した。この定年間近の教師は、大勢の生徒に慕われるだけの何かを持っているのである。

家康の乱入もあり、ジュースを飲みながら勉強会は一時休憩となった。その間も三成は熱心に参考書を読んでいて、義弘に褒められていた。そんなほっこりとした空気の中、再び教室のドアが大きな音を立てて開かれた。

「こらっ!!お前さん達か!?廊下のガラスを割ったのは!」

現れたのは用務員の官兵衛であった。彼の頭には分かりやすいたんこぶが出来ていて、例のソフトボールが直撃したのだろうと容易に想像が付いた。気の毒なことである。

「見逃してよおじさん!遊んでた訳じゃないんだ。」
「また徳川が石田に性的嫌がらせを仕掛けた。正当防衛の結果による損壊よ。」

佐助と元就の話を聞いて、官兵衛は額に手を当てながら深い溜息を吐いた。

「…しょうがない。今回ばかりは大目に見てやるよ。」

本来ならば見逃してなどやれないが、彼も家康の行動は目に余ると思っていたのだ。

「報告書に何か理由を書かねばならぬのなら、徳川が壊したと書いておけ。事実よ。」

確かに、家康があのボールを避けなきゃガラスは割れずに済んだもんな!と元親が笑った。

「最終下校の時間までには帰りんしゃいね。」
「戸締まりの確認忘れるなよ。」

三成達にそう伝えてから、義弘と官兵衛は教室を後にした。



「ん〜……。あんまり捗らなかったな…。」

最終下校の15分前、元親が伸びをしながら言った。

「なぁ、明日も勉強会しねぇ?俺、このまんまテスト受けらんねーよ。」
「某も賛成でござる!」
「じゃあ俺様も。」
「…我はどちらでも良い。」
「三成が参加するのならばわれも参加しよう。三成よ、どうする?」

皆の様子を見る限り、明日も勉強会が開催されそうだ。三成は少し考えてから口を開いた。

「…また家康が襲って来ても、貴様らが追い払ってくれるのならば……考えてやらんことも無い。」

それに対する返事は、全員同じだった。

「勿論!!」

家康の鬱陶しさのお陰で、彼らの結束はまた強まったのであった。少々家康が不憫な気がしなくも無いが、あの愛情表現の方法を改めない限りは、三成達との溝は永遠に埋まらないであろう。



「今週の土日、某の家で合宿をしませぬか!?」
「賛成!」

楽しい勉強会は続く(笑)。



おしまい☆



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