お呼びでないのA


 「三成殿ぉ!!」
 家康が立ち去った後、幸村は三成をぎゅっと抱き締めた。
「徳川殿が週二と言うならば某は週七でござる!徳川殿のものになど…なりませぬ、よね?」
 うるうると瞳を潤ませて三成を見詰める幸村。
「…馬鹿が。私が貴様を裏切るとでも思っているのか?週七どころか、貴様は365日24時間だ。」
 こつ、と額をぶつけて、三成は小さくほほ笑んで見せた。
「三成殿っ!」
 三成の返答に歓喜した幸村は、彼を押し倒して何度もキスを贈った。
「はいはいご両人、もうすぐ時間だよ。Dスタジオに行ってね。」
 佐助は二人のラブシーン(?)にも慣れたもので、いちゃつく二人を控え室から送り出した。



 今日収録する番組の内容は、話題の占い師に今をときめく芸能人達を見てもらう、というものだった。トップアイドルからアナウンサー、モデルに俳優と招かれたのはそうそうたるメンバーだ。そして彼らを見る占い師も、「彼女の言うことは絶対!」と各メディアで評判のプリンセス・ツル。出演料だけでも幾らかかってんだろ?と、佐助は裏から他人事のように出演者達を眺めていた。

 一番最初に占ってもらうのは、女優の浅井市。彼女は薄幸美人で、未亡人役などが良く似合う役者だった。
「バシッと見通しますよっ☆」
 の決め台詞の後、プリンセス・ツルはスタジオ内にも関わらず矢を放った。それは鏃のないものなので、当たって大怪我をする心配はないものだったがスタッフ達は機材やセットが壊れやしないかと冷や冷やしている。天井にぶつかり、カン、と音を立てて落ちて来た矢を見て、プリンセスは何かを見通したようだ。
「お市ちゃん、貴女の悪いところは物事を何でも後ろ向きに捉えるところです。『自分なんて…』って思っていないで、胸を張って前を向いて生きて下さい。お市ちゃんには、そうする資格も価値もありますっ!」
「そんな……でも……。」
「下や後ろばかり見ていないで、上や前を向いて下さい。そうすれば、旦那さんの顔もよく見ることができますよ☆」
「…長政様の、お顔を……?分かったわ、市…頑張る……。」
 市はプリンセスに礼を言い、静かにほほ笑んでから席を立った。満足そうな優しい笑みを浮かべる彼女を、その場にいた全員が初めて見た。「プリンセス凄いな…」とにわかにスタジオがざわついた。
 プリンセスは、良いことも悪いこともズバズバと言ってのけた。ある俳優は、「家庭を顧みないと破滅しますよ☆」とか、「貴方のアンラッキーアイテムはカツラです。植毛にしたら運気が上がるし気になることも減りますよ☆」とか言われて、カツラであることもバラされていた。ちなみに彼女に悪気はない。

 次はいよいよ、真田石田の番だ。三成は無表情に、幸村はドキドキしながらプリンセスの前へと出た。「頼もう!」と大声を出し一礼をした幸村の頭を、三成が「うるさい」とはたく。それから二人は、用意された二人掛けのソファにぴったりとくっついて座った。
「初めまして!私、お二人のファンなんですけど、今日はそういうのナシで、本気でバシッと☆占わせて頂きますね!」
 変わったデザインの巫女服の裾を揺らしながら、プリンセスは弓を引っ張った。放たれた矢は綺麗な弧を描き、最後方にいたスタッフの後ろに落ちた。
「す、凄いですぅ!!」
 自分が打った矢を見て大興奮のプリンセス。
「こんなに相性の良い方々は、私初めまして見ましたっ!!お二人がこうして並んでいる限り、怖いものなんてありません!無敵です!最強の二人組です!」
 真田石田の二人を見て、プリンセスは頬を紅潮させながら力強く話す。その内容に幸村が破顔し瞳を輝かせた。
「真でございますか鶴姫殿!!」
「真でございます真田さん!お互いがお互いを補い合っていて、仕事の相手としても恋人としても、これ以上ないパートナーですよ!」
「聞きましたか三成殿!我々は最強のコンビらしいですぞ!!」
 幸村は感激のあまりに三成を抱き締めて、彼の白い頬にちゅっとキスをした。三成の反応はと言えば、幸村の抱擁に何を言うでもなくプリンセスに今後のことを問うていた。
「これから先も、私達は共に在って問題はないか?」
「はい!なぁんにも心配しないで、これからもずっと、二人で仲良くしていて下さいね☆ただ、お互いを思いやる気持ちをなくしたら……一気に不幸になっちゃいますからね!」
 互いを大切にするようにと最後に釘を刺されたが、幸村も三成も言われるまでもないと指を絡めて手を繋いだ。そしてそのまま、プリンセスに一度頭を下げてから元座っていた席へと戻って行った。




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