お呼びでないの(幸三・現パロ)


 ※こちらは、「だだ!」・「さくらんぼ」の続編となっております。芸人パロ。






 出番を待ちながら、楽屋でくつろいでいる真田石田の二人。今日与えられた控え室は畳の部屋だったので、足を伸ばして座る三成の太股に、幸村が頭を載せて寝そべっていた。そんな二人を見て、佐助が呆れたように言う。
「あんた達見てると、この国はまだまだ平和だな〜って思うよ。」
 先ほどから観るでもなく点けっ放しにされたテレビでは、ジャーナリストの男が国際社会における日本の立ち位置ついて話し、この国の将来を憂えていた。
「佐助、日本は平和ではないのか?」
 三成に甘えながら、幸村は一度テレビに目線をやって、それから佐助を見た。
「まぁ、戦争がないだけ平和なのかな?人として最低限の暮らしも一応は保障されてるし。」
「…??」
 不思議そうな顔をしている幸村の、栗色をした柔らかい髪を三成が撫でた。
「貴様はあまり難しいことは考えなくていい。どうせ分からん。」
 幸村は気持ち良さそうに目を細めて、三成の細い腰に抱き付いた。
「今日も絶好調だなあんたらは…。」
 相変わらずいちゃいちゃべたべたする幸村と三成に、佐助は苦笑いを浮かべた。
「ああ、そうそう。昨日も確認したけど、この番組の収録終わったら雑誌のインタビューが入ってるからね。私服で良いって話だけど、何か衣装用意してもらっとく?」
 佐助が確認のためにスケジュール帳を開く。それとほぼ同時に、控え室のドアが大きな音を立てて開いた。

 「みっつなり〜ぃ!!」

 現れたのは徳川家康。真田石田と、マネージャーの佐助の平穏が打ち砕かれた瞬間であった。彼の登場により衝撃を受けた幸村達三人が、酷い顔をして真っ白になり固まった気配がした。



 家康は、元はモデルだったが現在は役者からバラエティのトークまでこなす人気のマルチタレントだ。「笑顔がさわやかで可愛い」とか「こんな息子が欲しい」とか言われて、特に中高年のおば様達からの支持が熱い。だがこの男は、数週間前にあるクイズ番組で真田石田と共演をし、「一目惚れをした!!これは運命だ!!」とか何とか言って三成に一方的に付きまとう、迷惑極まりない人物なのであった。「三成殿だいすきっ!」な幸村にとって彼はウザい以外の何者でもなかったし、マスコミに家康と真田石田を面白おかしく変な風に書かれても困るので、佐助にとっても邪魔者であった。

 お呼びじゃないことを知ってか知らずか、家康は部屋の中にずかずか入って来る。
「三成、今日も一緒だな!なぁ知ってるか?ワシらが出会ってまだ三週間と四日だが、もう六回も共演してるんだぞ!!一週間に二回は会ってる!何か運命的なものを感じないか!?」
「誰が感じると申すか!!」
 驚愕の表情のまま固まっていた幸村だったが、家康の気色の悪い発言に我に返り三成に代わって返事をした。勿論、三成に抱き付いたままで。
「石田の旦那に会ってるって言うんなら、真田の旦那にも同じペースで会ってる訳だしね〜。」
 佐助も、肩をすくめながら幸村の援護射撃をする。
「帰れ家康!ここは私達の楽屋だっ!!」
 三成が琥珀色の瞳を釣り上げて怒鳴ったが家康にはまったく効果がなく、「こっちを向いてくれた!」とばかりにニコニコしている。
「そーゆーつれないところもそそるなぁ…。でも三成がそこまで言うならもう戻るとしよう。じゃあ後で、スタジオでな!」
 家康は来たときとは裏腹に、静かに扉を閉めて出て行った。だが、再びドアが開いて奴が顔を出した。
「真田、いつか三成をもらうからな!」
 そしてニカッと笑った家康に、幸村は思わず近くにあった己のボディバッグを投げ付けた。しかし、すぐにドアを閉められて、金属製のそれにぶつかりがつん!という音を立てるのみだった。




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