盟友!A


「真田ぁああぁあ!!三成から離れろぉお!!」
「徳川殿!?」
「家康!?」
 物凄い形相で二人に迫る家康。幸村はきっちりとお勘定を置いてから、三成の手を取ると走り出した。

 「何故こんなところに家康が!?」
「分かりませぬ!しかし徳川殿は石田殿を求めているに違いありませぬ!とにかく今は逃げましょうぞ!!」
 あの尋常ではない様子の家康と、町中でやり合うのは周りへの被害も考えると賢い選択ではない。幸村と三成は、入り組んだ路地を何本もすり抜け一軒の民家の陰へと隠れた。

 「真田、三成!どこだ!」
「……探されておりますな…。」 
「真田、先に行け。家康の狙いは私だ。不本意だが今ここで奴の首を刎ねてやるとしよう…。」
 三成は右手に持った刀を、チャキッと鳴らした。そして、知らず握り返していた幸村の手をそっと離した。
「なりませぬ!!」
「そこか!!」
 幸村が大声を出したせいで隠れている場所がバレてしまった。家康は、目の色をおかしくして異様な雰囲気を纏っていた。呼吸をするたびにシュコーシュコーと変な音を立てている。…恋は人を恐ろしい物の化へと変えるのだ。
「真田!三成を渡せ!!」
「お断り申す!!渡すの渡さないのと…石田殿は物ではござらん!!某の大切な友人でござる!」
 三成を庇うようにして立ちはだかる幸村。
「真田……。」
 三成は、一触即発状態となった家康と幸村に困惑しているようだ。
「石田殿は、某がお守り致すぅうう!!」
「…友人だと?真田……お前は三成の何のつもりでいるんだ?」
 家康がフードを被り拳を構えると同時に、どこから飛来して来たのだろうか、本多忠勝がズシンと音を立てて主人の後ろに着地した。こいつに加勢されては分が悪いか、と三成も刀を握る。……が、忠勝は家康をひょいと担ぐとすぐに空へと飛び立って行った。どうやら彼は、仕事をほっぽり出して出歩いている家康を連れ戻しに来ただけらしかった。「三成ぃいいぃ〜!!」と言う、家康の声だけが辺りに虚しく響く。




 「何だったんだ……?」
「…さぁ?しかし、石田殿に大事が無くて良かったでござる!」
 ニッカと笑う幸村に、三成は胸がぽかぽかと温かくなるのが分かった。幸村の心の炎が、三成の心にも燃え移り燻り始めたらしい。お互いに無自覚な二人であったが、この恋の炎が激しく燃え盛るのも時間の問題かと思われる。




 もう敵などいないはずの帰り道だったが、二人は繋いだ手を離さなかった。




   ―終わり―



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