Iの苦悩〜其ノ二〜


 東軍・徳川の陣営に、早馬で「西軍の大将、石田三成は体調を悪くしている模様」との情報がもたらされた。当然東軍の兵士達は、敵の総大将が弱っているならばその隙を突ける今が好機、と血気に逸っている。だが大将である家康は、進撃の令を出さない。それどころか、「何か精の付くもの……卵や野菜、魚などはないか!?あったら用意してくれ!」と、栄養のある食材を部下達に用意させ、単身西軍の陣(三成の元)へと脇目も振らずに向かったのだった。





 一方西軍では、風邪を引いた三成を、イケメン(←色んな意味で)達が構い倒していた。

 「石田ぁ、野郎共がマグロを獲って来てくれたぜぇ!これ食って早く風邪なんか治しちめぇな!」
「病人に生の魚を与えるなど愚かにもほどがあるわ長曽我部め。日輪の恩恵を受けた昆布(※早い話がただの昆布の天日干し)で出汁を取った粥を用意させた。そちらを食え石田よ。」
「三成どん、卵酒ば作ったど!滋養を付けるのも酒が一番よ!」
「石田殿!何か食べる物の他に欲しいものはございませぬか!?…へ!?徳川殿の首!?ただ今某、そちらは持ち合わせておりませぬ……。しかしこの真田源二郎幸村!来たる大戦にて必ず徳川殿の首を取ってみせましょうぞ!!」
「おのれ病原菌よ!三成から早う出て行け!!われから何人たりとも、たとえ病であっても三成を奪わせはせぬぞ!!」
「おいおい刑部、三成の病気はそんな大仰なもんじゃないだろう。三成、お前さんもこいつらに何か言ってやれよ。」
「貴様ら、喧しいッ!!」

 上から元親、元就、義弘、幸村、吉継、官兵衛、そして三成本人。

 全員よかれと思ってやっていることだが、行動がてんでバラバラ過ぎて結果三成は困惑し、イライラしている。その光景を木の上から見ていた佐助は、「この軍大丈夫なのかなぁ……。」と何回目か分からぬ溜め息を吐いたのだった。






 更に。

 東軍の陣から飛んで来た家康が、物陰からそんな西軍の(主に三成の)様子を覗き見ていた。想像はしていたが、三成の愛されっぷりに彼は震えながら凄まじい顔をしている。ムンクの「叫び」…みたいな。いや、楳図○ずおの描く「ギャアアアアァ!」…みたいな。
(……ワ、ワシの三成が…っ!!)


 「ワシも西軍になるー!!」
「…曲者!!いや、徳川殿!?
ちょうどいい、石田殿が貴殿の首を欲してござる!此処に置いて行かれよぉおおお!!」
 無謀にも敵陣に突っ込んで行った家康を、幸村がどでかいマッチ棒(最強武器)でボコり出す。吉継の数珠は飛び交っているし、三成まで「殺してやるぞぉおお!!」と恐惶状態になりてんやわんやだ。




 家康の体力ゲージが赤色になった頃、何処からか飛来して来た忠勝に助け出され、事態は取りあえず収拾したそうな。
 そんな状態でも、家康は帰り際に持って来たお土産を差し出すのを忘れなかった(勿論受け取ってもらえなかったが)。


 「……“ワシ<虫”って感じ?」
 ボロ雑巾一歩手前となった家康の悲しい呟きに、忠勝のモーターがウィィン……と頷くように鳴ったのだった。




 関ヶ原の戦い開戦まであと○○日……。家康の想いは、三成に届くのだろうか……。




  ―おしまい☆―



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