Iの苦悩(愛され三成)


 日ノ本を二分して行われる大きな大きな戦の火蓋が、間もなく切って落とされる。


 そんな中、東軍の総大将である徳川家康は、悩んでいた。


 「西軍の三成には毛利、真田、元親がついたか……。忠勝、どう思う?」
「………。」
 ガシャン、と言う機械音のみを立て、何も言わぬ忠勝。家康とて返事を期待して話を振った訳ではなく、確認としての行動だった。更に「そうだよな、心配だよな」と一人ごち、ああー!と頭を抱え始めた。

 「三成の周りが、イケメンで固められてるなんて!!!」
「!!?」
 忠勝のガッシャン、ウィーン!と言う音が、「お前そっちの心配かよ!」と言うツッコミに聞こえた気がした。しかし家康は続ける。
「真田は子犬と言うか、真っ直ぐ素直なあどけない弟タイプ…。元親はデカい器とあのガタイ、あの笑顔。見るからに頼れるアニキだな…。毛利は整った顔立ちに、冷たい中にふと見せるありのままの感情が魅力だったりする…。そして忘れちゃならないのが刑部だな。三成の一番近くにいて信頼されていて、公私共に支えになっている…。そう言えば黒田官兵衛も味方してたな…。奴も奴でワイルド系男子と言えなくもない。そして不運で哀れ、ギャップ萌え狙いか…?鬼島津はまぁ心配ないだろうが、保護者としてきっと手強いだろうな……。
なぁ忠勝?…あれ、忠勝ー??」
 延々と一人語っていた家康を尻目に、忠勝は付き合い切れないとばかりとっくに何処かへと飛び去っていた。しかし、家康の解説(?)はどこの乙女ゲーなのだろうか。本人は至って真面目に考えているのだから余計にタチが悪い。

 「ああ、三成……。
昨夜は誰に抱かれたと、今宵は誰に抱かれると言うんだ……。」
 …最早この場にツッコミを入れる者などいなかった。






 その頃、西軍では。

 「…っくしゅ!」
「石田殿、風邪を召されたか!?大丈夫でござるか!?」
「そんな薄着してるからだぜー?これでも着てな!」
「貴様のような年中半裸の露出狂男に言われたくはないわ。石田、向こうに火を起こさせてある。寒いのならばあちらへ行け。」
「やれ三成、食事を満足に取らぬせいよ。われが常々申しておろう。」
「ほら握り飯くらい食えよ。小生の野望のためにも、ここで大将に参られたら困るんでね。」
「三成どん、精を付けるにゃ酒よ酒ー!!」

 小さくくしゃみをしたやたらに庇護欲をそそる総大将を、みんなでちやほやしていたのであった(上から幸村、元親、元就、吉継、官兵衛、義弘)。



 家康の心配は、どうやら杞憂では終わらぬようだ。




  ―おしまい☆―



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