栗と親友とA


 「貴様か……。」
 三成は心底嫌そうな顔で忠勝を引き連れて現れた家康を見た。
「何だ、イイもの食べてるな!ワシにも分けてくれ!」
「やらん。貴様は虫でも食っていろ。」
 ニッカと笑って焼き栗をねだる家康に、三成は氷点下の対応をした。
「一つくらいいいじゃないか、三成のケチ。」
「何とでも言え、私が貴様にやれるものなど髪の毛一本も無い。」
「…三成の、髪……?
欲しいかも知んねぇ……。」
 じ、と家康は銀色に輝く三成の髪を見詰めながらごくり…と喉を鳴らした。三成はあまりの気味悪さに、飛び退くようにして足下の玉砂利を鳴らしながら吉継の後ろに隠れた。
「…徳川よ、ぬしは心底気持ちの悪い男よな。
大体この栗はわれが三成から頂戴したもの。既に所有者はわれ故欲しいのならばわれに乞え。」
「三成は刑部には優しいよな…。ワシにも優しくしてくれよ。」
 家康は口を尖らせて抗議するが、あの体格でそれをされても可愛らしさなど微塵も湧き出しては来ないのであった。隣りの忠勝は相変わらず黙っている。
「刑部、もっと食え。」
 三成はとうとう無視を決め込んだらしくまた栗を剥き始めた。
「三成、栗は美味だがわれは喉が渇いた。向こうで茶と一緒に頂くとしよう。」
「そうだな。」
 城内に向かう三成達の後を、ちゃっかりついて行く家康(と更にそれについて行く忠勝)。

 「ぬしは来るで無い。」
 バシッ!と吉継の数珠が家康にクリーンヒット。その隙に三成を輿の端に乗せ、二人は素早く室内へと逃げ込んだ。
「死ね。」
 そして三成は、家康に一言浴びせるのを忘れなかった。




 色付き始めた庭木の隙間に伏したままの家康をよそに、吉継と三成はささやかな茶会を楽しんだのであった。




   ―終わり!―

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