育男(イクメン)!


「それじゃあ清正、よろしく頼むな。」
「お、おぅ……。」

あんまり嬉しそうに三成が笑うもので、清正は黙って彼女を見送るしか無かった。…本当は、文句も泣き言も言いたかったのだけれど。



今日、三成はねねに連れられ城下へと出掛ける。虎々を出産してからというもの、三成はあまり自分のために時間が取れていなかった。彼女は自分自身のことにそう興味を持たない性格であったが、毎日育児と執務に追われ、このところ疲労に加えてストレスも溜まっているようだった。目の下に隈を作り、髪は傷んで肌は荒れて…。それを見兼ねた秀吉とねねが、この機会を設けてくれたのだった。
余程楽しみだったのか、三成はらしくも無く朝からそわそわしていた。その上、ねねが用意した華やかな紅色の着物に文句の一つも言わずに袖を通し、大人しく化粧まで施されていたほどで。普段ならば、激しく抵抗して嫌がっているだろうに。

「一日くらい、子どものことも仕事のことも忘れたって罰は当たらんじゃろ!今日は姫さん気分を味わって来い!」

正しく『姫』と化した三成を、秀吉は笑顔で送り出す。

「はっ、ありがたき幸せ…。行って参ります。」

そう言って三成は主君に恭しく頭を垂れた。だが、その傍らにいる清正の顔は引き攣っている。彼も秀吉に倣い笑顔で恋人を見送りたかったのだが、腕の中で眠る不安材料のせいでうまく笑えないのである。目が覚めたときに母親がいないと分かったら、わが子はどんなに泣き叫ぶであろうか。清正は、今から頭が痛くてしょうがなかった。

「さ、行くよ三成!」
「ぅわ、おねね様引っ張らないで下さい…っ!」

清正の心情など露知らず、三成は寝息を立てている虎々のまろやかな頬をつんと突つき、ねねに手を引かれて大阪城を後にしたのだった。小さくなる二人の背中を眺めている清正に、正則が横から声を掛けて来た。

「何だよ清正ぁ、しょげちゃってよぉ!あ、分かった!おねね様も三成もいねーから寂しいんだろ!?カ〜ワイ…いってぇええ!!」

清正は、正則なりのコミュニケーションとさえ言えるいつもの揶揄を許容できず、ボディに重い一撃を加えてリーゼントの若武者を黙らせたのだった。KYは身を滅ぼす、恐ろしいことである。

- 67 -


[*前] | [次#]
ページ:






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -