子虎と侮るなC


 清正は手早く己の着衣を脱ぎ去り、ハァハァと呼吸を荒げて後ろを振り返った。そこには。
 手拭いで前を隠されてはいるものの、傷一つ無い上等な磁器のように白く滑らかな美しい肌が、惜しげなく晒されていた。
「…何を興奮している。助平な子供だな。」
 ふん、と息を吐くと三成はさっさと浴場へ入ってしまった。
(三成尻丸出し!!)
 清正は三成の後ろ姿を見てハフハフ言っている。…いくら稚児の容姿をしていても、流石にこれは気持ちが悪い。深呼吸を一つして乱れる呼吸を落ち着けてから、三成を追って浴場に入った。


 「お虎、早く来い。背中を流してやろう。」
 先に入っていた三成は、素肌に僅かな泡を纏うのみの姿になっていた。本来ならば辛抱堪らぬ事態なのだが、悲しいかな体は子供。燻る欲望を押さえ付けて、清正は三成にされるがまま体を洗われていた。
「くすぐったい…。」
 小さく笑って、身を竦める清正。その様子を見て三成も表情を柔らかくする。
「子供も、可愛いものだな…。」
 泡を流してやろうと湯を背中にかけた瞬間、ぼふっと湯煙ではない白い靄が清正を包んだ。その靄が晴れると、そこに男児はいなかった。代わりにいたのは、逞しい体躯と精悍な顔立ちの、加藤清正(標準サイズ)だった。


 「も…っ、戻った!!」
 歓喜の声を上げ、自分の体を動かし隅々まで確認する清正。



 それを見て開いた口が塞がらないのは三成だった。



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