秘密の避暑地A


***


「一体どうなってんだ……アレ?」

これは夢か。幻か。

正則の眼前には、彼が想像もつかなかった光景が存在していた。

己が身を潜める茂みからは幾らもない木陰の下。
仲睦まじく寄り添うのは兄貴分たる清正と、いけ好かないあの三成である。

寄り添うだけならまだしも。
あろうことか、清正の膝上に三成は頭を預けているのだ。
いわゆる“膝枕”というその行為は、余程近しい者同士の間でしか行われない。
正則は残念ながらまだその行為が叶ったことがない。……と、問題はそこではなく。

いつも喧嘩ばかりしている筈の二人が、何故あのようなことになっているのか。
清正と三成は犬猿の仲ではなかったのか。

状況が飲み込めず、混乱に頭を掻き毟る正則に突如――、鋭い眼光が注がれる。


「……そこに居るのは誰だ」

低く、威圧し捻り潰すような、そんな清正の声を正則は初めて聞いた。

虎の眼は鈍色の光を放ち、清正の得物である片鎌槍の切っ先よりも恐ろしいものであった。
だから正則は、反射的に立ち上がり。自分であることを必死に証明するため、ちぎれんばかりに手を振ってみせる。

正則の姿を認めた清正は――、呆然と彼を見返した。



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