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子虎と侮るな@
「三成、この子のお世話を頼むよっ!!」
そう言って頭を下げるねねに連れられて来た子供は、歳の頃は5歳か6歳ぐらいか。健康的な浅黒い肌に短く切り揃えられた銀色の髪、幼いながらに意志の強そうな男らしい目付きをした、将来はワイルド系のイケメンまっしぐらであろう男児であった。
「おねね様、話は後です、頭を上げて下さい!」
しかし三成はそんな童には目もくれず、目の前で頭を垂れるねねを制した。彼女が、自分等にそんなことをしてはいけないのだ。
「それで、一体どういうことなのですか?」
「この子はね、清正の甥っ子なの。ちょっと訳があってしばらくうちで預かることになって…。」
いきなり見知らぬ童を連れて来られて面食らっている三成に、ねねは事情を説明した。
…表向きの。
事実は、ねね忍法で拵えられた秘薬を、ちょっとした事故で清正が頭から被ってしまったことに始まる。その清正が浴びた秘薬と言うのが、俗に言う「若返りの薬」。それゆえに清正は20歳近く若返り、童の姿になってしまったのだ。信じられない話だが、ねね忍法恐るべし、である。
「お虎じゃ、お虎がおるぞ!こりゃあめんこいの〜!」
そんな小さくなった清正を見た秀吉は、思わず彼を抱き上げた。
「おねね様…俺はどうすれば……。」
秀吉に抱き抱えられたまま、不安げにねねを見上げる清正。
「清正がかかった薬は、ちょっと失敗しちゃったものなんだよ。効果がずっと持続する訳じゃないの。だから、いつか効果が切れて元に戻るはずだよ!」
「そうですか……。」
元の姿に戻れると聞いて、ひとまずは安心するチビ清正。
「大変なことに変わりはないが、命に関わる事態じゃないだけ良しとするかの〜。」
秀吉は在りし日の可愛らしい童になった清正に、大層ご満悦の様子。息子同然の人物が常ならぬ事態に陥っているのに、この余裕……これが天下人たる者の器なのだろうか。しかし、ひっつけられた髭がちくちくと痛そうである。
「う〜ん…、元に戻るまでのお世話は……三成にお願いする?」
「な…っ、何故奴なのですか!中身まで子供になった訳では無いのですから、俺は誰かの世話にならずとも…!」
「でも、その体じゃあ不都合もいっぱいあると思うよ?」
「そーじゃそーじゃ。三成ならいいじゃろ、お前さん達が懇ろになっちょるのは、ワシらも知ってるで〜。いい機会じゃ、カノジョに思い切って甘えてみたらいいじゃろ。」
「う……っ。」
秀吉の提案は魅力的であった。
…こういった次第があって、三成の元にねねとチビ清正が来たのであった。
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