flirtation,flipping!


 良く晴れて、日差しも暖かい春らしい日和。そんなぽかぽか陽気の中、幸村と三成は大坂城下を視察も兼ねて並んで散歩をしていた。
 馬や荷台の往来も多いため、道の端を歩く二人(身分があるとは言え、それをひけらかすような振る舞いなどは二人共決してしない)。安全な民家、商店の長屋などが並ぶ右側を三成が歩き、危険な道に面する左側を幸村が歩く。三成は幸村のその心遣いを嬉しく思っていたし、幸村は自分の右手と三成の左手がこつんとぶつかる度に、表情を緩めていた。
「さすが大坂。賑わっておりますなぁ。」
「当然だ。秀吉様と半兵衛様が築いた町だからな。」
「確かにそれもございましょうが…。今ここを守護していらっしゃるのは三成殿に他なりませぬ。変わらず安心して暮らしているというのが、皆の笑顔から伝わって参ります。三成殿は、立派にお二人の後を継いでおられますな!」
 幸村の言葉に、三成の白い頬に赤みが差す。
「…言い過ぎだ馬鹿者。しかし、曲がりなりにも秀吉様と半兵衛様の後を継げていると言うのなら……その、こ、光栄だ……。」
 三成の嬉しそうな様子に、幸村もほほ笑む。
「あ!あんなところに団子屋が!参りましょう三成殿!!」
「真田、引っ張るな!」

 そう、幸村と三成は清く正しくお付き合いの真っ最中なのだ。佐助は主の遅い春の到来を涙を滲ませながら喜び、三成の親友兼保護者である吉継は、当人が望むならと現状を見守っていた(しかし三成を少しでも不幸にしようものなら、幸村の五体を引き裂いてやろうと目を光らせている)。
 「まずは団子と…お汁粉もあるのですな!いや甘酒も捨て難い!三成殿は何になさいますか?」
「私はいい。」
「ではお抹茶でも!お代は某が出しますゆえ!」
 茶屋の椅子にぴったりくっついて腰掛けて、仲睦まじい様子の二人。それを物陰から不穏な眼光が見詰めていたのだが、二人は気付いていなかった。



 三成達の様子を窺っているのは、東軍の総大将である家康だった。敵同士であるにも関わらず、彼は三成に一方的に想いを寄せていた。本当はこんな真似などせず堂々と城に入り三成に会う予定だったのだが、その想い人が男と連れ立って歩いているのを見付けてしまった。それを放っておくことは到底できず、そのまま尾行をして出て行くタイミングを完全に逃し今に至るという訳だ。
(真田、随分と三成に親しそうに……。)
 幸村に対して、次第に嫉妬心が燃えていく。二人が一服を終え再び歩き出したときに、家康の心は大炎上した。三成が、幸村に対して笑ったのだ。ふわりと、優しく、綺麗に。
「ワシにはそんな風に笑ってくれないのに!」
 思わず上げた声に、幸村と三成が振り返る。
「誰だ!!」
「三成、ワシだよ!」
 家康の脳内では三成は既に自分の嫁。躊躇なく家康は姿を見せた。
「会いたかったぞ!」
 家康が近付いた分だけ三成は後退る。
「貴様、今は北に同盟を結びに遠征をしているはずではなかったか!?」
「それなら部下達に任せた。お前にどうしても会いたくなって!」
 満面の笑みを浮かべる家康に対し、三成の顔色はどんどん悪くなる。そんな恋人を守るべく、幸村が立ちはだかった。何も言わずに家康を睨み付ける幸村。
「真田、何をそんなに怖い顔をしているんだ。そこを退いてくれないか、ワシは三成を抱き締めたいんだ。」
「お断り致す!!」
 今日は視察が目的だったために、目立ついつもの二槍は置いて来た。腰に携えた刀に手をかける幸村。
「お前が何で邪魔をするのかは分からないが、ワシはこんな往来でやり合う気はないぞ。三成の大事な町だもんな!」
 家康はにっこりと三成に笑いかけるが、彼は顔を真っ青にして口許を手で覆っている。肩も激しく上下していて、様子がおかしい。




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