兎の恩返しA


 それから二人は夫婦となり、父と三人で慎ましやかに暮らしていきました。幸村と兼続はとっても仲が良く、お互いに愛し合っていましたがなかなか子宝には恵まれませんでした。今はこんな山奥で暮らしていますが元々真田家は名家です。幸村の父は、世継ぎが生まれるのを楽しみにしていました。
「幸村……子ども、欲しくないのか?」
 兼続はこう言いましたが、幸村は決して夜兼続に何もしていない訳ではないのです。兼続は顔や内面だけでなく体つきまで幸村の好みで、たわわなその身に彼が何度溺れたかは分かりません。
「…いや、そんなことは……。」
 幸村は口では否定するものの、答えは明白でした。兼続の瞳が絶望の色に染まりました。
「ち、違います兼続殿!貴女に不満がある訳などない!!」
 今にも泣き出しそうな兼続をぎゅっと抱き締めて、幸村はゆっくりと口を開きます。
「…私は…貴女を失うのが怖くて……。」
「わたし、を…?」
「貴女は、私が以前に助けたあの白兎なんでしょう?世継ぎを設けて、真田家を再興させるのが父と、そして私の悲願でしたから……。その願いを叶えたら、貴女は雪山へと消えてしまうのですよね?ならば、私は子どもなどいりません。私は貴女とずっと……っ!」
「待て待て待て!幸村、何だそれは!!」
「…へ?」
 兼続は、何やら勘違いをしているらしい幸村に説明を始めました。まず、察しの通り自分は助けてもらったあの兎。これは間違いないことであると。それから、
「私は謙信公……いや、人間達には“山の神”と言った方が分かりやすいかな?…に、お願いに行ったんだ。命を救ってもらった人間に、恩返しをしたいと。そしてその者が望んでくれるなら、命が尽きるまで共にありたいと…。山の神はそれを聞いてくれた。だから私は今、ここにいるんだ。」
 そう本当のことを話して、にっこりと笑いました。それを聞いた幸村は瞳を輝かせます。
「じゃ、じゃあ山に帰ったりなど……?」
「ああ、お前が望まない限りはしないよ。」
「…嬉しいです、兼続殿!私は貴女を離しませんっ!」
「うわっ!?」
 幸村はよほど嬉しいのか、兼続を雪原の上に押し倒しました。ぼふっと雪に沈む二人の体。
「私の正体が兎でも、変わらず愛してくれるか?」
「当たり前です!」



 そうして幸村が子を望むと、程なくして兼続は身籠もりました。それから幸村達家族は、いつまでもいつまでも、幸せに暮らしましたとさ。

 めでたしめでたし。






幸「…と言う台本を書いて来たのですが。今年の新入生歓迎会の劇にいかがでしょうか。」
三「うさ耳に毛皮のビキニとか、お前ただそれを兼続に着せたいだけだろう…。」
幸「……てへ☆」
兼「取りあえず登場人物の名前を変えようか。」




   おしまい☆



 実は現パロでしたって言うオチ。義トリオ演劇部??



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