兎の恩返し


 むかーしむかし、ある雪深い山奥に、真田幸村と言う名の心優しい青年が住んでいました。



 ある日幸村は、いつものように馬に己を引かせて、スキーの要領で雪原を滑り回り自慢の槍術で密猟者達を薙ぎ倒していました(戦国無双3のOPムービー参照)。狩っても狩っても現れる密猟者達。毎年この山の積雪は大変なものでしたが、冬にしか出会えない珍しく美しい動物達もたくさん生息していました。幸村はそんな動物達とこの豊かな山を大切に思っていたので、毎日槍を振るっては心無い人間達を追い払っていたのでした。

 先ほど吹き飛ばした密猟者が所持していた檻の中に、真っ白でキレイな兎が捕まっているのを見付け、幸村はすぐに逃がしてやりました。その兎は一度幸村を振り返り、小さな足跡を残して白い山に消えて行きました。



 その日の夜、激しい吹雪になりました。年老いた父親と二人暮らしの幸村は、父が寒くないようにと木製の戸を内側から補強していました。そのとき、とんとん、とその扉を誰かがノックしました。
(こんな時間に、こんな山奥に?)
 幸村は少し不審に思いましたが、誰かが遭難してここに辿り着いたのであれば大変だと、すぐに扉を開けてあげました。すると、そこにいたのは頭からぴょっこりと長い耳をのぞかせ、白い毛皮で出来たビキニ(?)を身に付けて、同じく毛皮製の履物を履いた女性。極め付けに、白くて真ん丸な尻尾まで生やしていました(それと耳はぴこぴこ動いていました)。それを見て幸村は、
「えっと……?間に合ってます??」
 とよく分からない返答して彼女にお引き取りを願いました。
「おぉっと間違えた!」
 白い毛皮の不審な女性はくるっと回ると、一瞬にして白い着物を纏い耳も尻尾も消えました。幸村は驚いて、ぽかんしています。
「すまない、道に迷ってしまって…。どうか一晩泊めては頂けないか。」
 そして女性は何事も無かったかのように一宿をねだりました。当然幸村は、返事に困ってしまいます。
(この女、明らかに怪しい……。)
「幸村、いいではないか、泊めて差し上げよう。こんな吹雪の夜に女子を放り出しておくなど、鬼の所行よ。」
 躊躇する幸村をよそに、彼の父が女性を泊めることを許可してしまいました。
「ありがとうございますっ!」
 女性は、二人に深々と頭を下げました。そのときに、彼女の結い上げられた黒くて豊かな髪がふわりと揺れます。不審さにばかり気を取られていましたが、女性はとても美しい見目をしていたのです。彼女の横顔に、幸村はうっかり釘付けになってしまいます。
「ち、父上!この者が私の精気を吸い取りに来た淫魔だったらどうするのです!?」
「うむ幸村、おかしな書物の読み過ぎぞ。」



 「私は直江兼続と申します。一晩、お世話になります。代わりに、お申し付け下されば何なりと仕事を致しますので。」
 兼続、と名乗った女性は非常に折り目正しい性格で、家に上げてもらってから今一度丁寧に挨拶をしました。兼続は料理の腕も良く、彼女がこしらえた雑炊は絶品でした。「同じ材料で作っているのに」と幸村も幸村の父も驚いていました。また、さり気ない気遣いで幸村の父をいたわり、幸村の一日の疲れを癒してくれたりもしました。

 そして翌朝。兼続は幸村に切り出しました。
「幸村、どうか私を、お前に嫁にしてくれないか。」
 急な申し出ではありましたが、幸村は(幸村の父も)優しくて美しい兼続を一晩で気に入ってしまい、すぐに「はい」と返事をしました(昔話のセオリー通りですね)。




- 23 -


[*前] | [次#]
ページ:






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -