ちぇんじ!B


 「柔らかくない……。イイ匂いがしない……。」
「筋肉がない……。頼りない……。」


 清正は、彼女を抱き締めたときの儚く柔い感触がないと嘆き、三成は、彼に抱き締められたときの安心感と逞しい筋肉がないと嘆いた。

 「「……早く元に戻りたい…。」」
 意図せずしてお互いの大切さが身に沁みた二人であった。


 「そうだ清正、おねね様だ!おねね様なら何か分かるかも知れないぞ!」
 うなだれていた二人だったが、三成が顔を上げて清正に提案する。
「そうか、忍術の心得があって秘薬にも詳しいし…。頼ってみるより他はないな!」
 なりふり構っていられない清正と三成は、まだ夜も明け切らぬ薄暗い中ねねを訪ねて駆けて行ったのだった。



 「「秀吉様、おねね様!まだお休みのところ失礼します!!」」
 二つの声がハモり、スパーンと秀吉とねねの寝室の、豪奢な襖が開け放たれる。
「…う〜ん……朝も早うから何じゃあ……?」
「三成…、清正…?」
 急な来客に、豊臣夫妻が目を覚ます。
「「それが……っ!」」


 …事情の説明は、こちらでは割愛させて頂こう(事の次第を説明する際も、二人のセリフは言葉もタイミングも寸分違わず重なっていたのだった)。



 「なるほどね…。目が覚めたら体が入れ替わっていたと……。」
「にわかには信じ難い話じゃが、お前さん達が嘘を吐くとは思えないしのぅ…。」
 ねねと秀吉も頭を抱える。
「…あ!そう言えば!みんな、ちょっと来て!」
 ねねが急に立ち上がり、廊下を走って行く。それに慌ててついて行く三人。早く起きた家人が、その騒々しい様を何事かと見送っていた。


 着いた先は、薬剤の倉庫であった。何やらごそごそと探し物をしているねね。
「あったぁ!」
 目的の小さな茶色い瓶を見付け出すと、丁寧に埃を払った。
「何か、元に戻れるような薬が…!?」
 縋るような瞳でねねを見る三成。
「確実に戻れるかは分からないけど……。これが精神を入れ替える薬なのは間違いないよ。
ただ、これはちょっと、昔悪事に使われてた薬でね…。例えば、地位ある人と自分が入れ替わって、名誉や財産を奪ってやろうとか…そう言う目的で使われてたらしいんだ。」
「…何ともおっそろしい薬じゃのー……。」
 説明を聞いて、秀吉と同じく清正も三成も身震いをする。が、四の五の言っていられる状況ではなかった。
「「飲みます。」」
 二人は服用を決意した。


 (…あれ?開けた形跡がある…。おかしいなぁ……。まぁ、いっか。)
 件の秘薬を開けようとしたねねは開封の痕跡を不審に思うも、取りあえずは目の前の二人のことが先決、と飲み下せるよう用意をした。
 黒なんだか濃過ぎる緑なんだか分からない色の怪しげな液体…。匂いは、無いが…。

 「「まずっ!?」」
 同時に薬を口にした清正と三成は、あまりの不味さに気を失い、その場に倒れた。




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