愛しき日々A


実は彼らの前世は、戦国時代に死に別れた恋人同士なのであった。
日ノ本一の兵と謳われた男と、豊臣秀吉の左腕として恐れられていた男。二人は確かに心を通わせていたが、乱世の渦の中で命を散らし結ばれることは無かったのだった。

それが、昔の記憶を持ったまま姿も生き写しで(それも片方は女として)生まれ変わり、平らか成る世で再会を果たしたのだ。二人はこれを、運命だと信じた。

「そこの赤い服の男、止まれ!イヤホンを使用しながらの自転車の運転は交通ルール違反だ!!」
「も、申し訳ありませぬ!今すぐにしまっ……え!?」
「…っ!!
…まさか…貴様は……。」

真紅の鎧具足に変わって赤いダウンベストをまとった男と、羽のように広がった羽織りに変わり、紺色のタイトスカートと黒いハイヒールの女。
…身なりは違えど、この者は。
視線が絡み合った瞬間に、二人はお互いが何者であるかを理解した。

「三成殿っ!!」

幸村は乗っていた自転車を倒し、他人の目など忘れて三成に抱き付いた。
…直後、ブン殴られて引き剥がされたことは言うまでも無いが。

かように、それはそれは感動的(?)な再会の末に二人はお付き合いを始め、今に至るのであった。



結局二人は朝日が登る頃までベッドの中で情交を結んでいたため、起きたのは昼近くになってからだった。

「貴様のせいで腰がだるくてかなわん。」
「うぅ…申し訳無うございます…。」

二人は今日は外出を諦め、家でのんびりすることに決めた。
しかし日用品の買い出しには行かねばならぬので、幸村達はシャワーを浴びてから適当に着替え、チラシを片手に近所のスーパーへ向かった。

「幸村、今日は何が安い?」
「トイレットペーパーと、洗剤と…。あと食料品なら卵に醤油に、鶏モモ肉もお買い得でございますぞ!」
「よし、ならば今晩は唐揚げにしよう。」
「わーい唐揚げ!やったでござるぅ!そうだ、おやつ!お菓子は買ってもよろしゅうございますか?」
「…100円以下の物を一つだけな。」

こんな所帯染みた夫婦なのか親子なのか分からない会話をしながら、幸村と三成はバスケットを二つ載せたカートを押して、陽気で少々間の抜けた音楽(このスーパーマーケットのオリジナルソング)が流れる店内へと入って行った。



何気無い日常が、お互いがいるだけで何よりも尊く、愛おしく感じる。

『今度こそ』

言いはしないけれど、繋いだ手から、絡めた指の温もりから気持ちは伝わって、互いの体を行き来さえしているような。

『離しはしない。』

彼らの幸せな日々は、まだまだ始まったばかりだ。




ーおしまい(ハッピーエンド以外は許可しない!)ー




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