おさわり。
バイトの帰り、駅前の繁華街は賑わっていた。
最近改装を終えたばかりのお洒落な駅ビルから、同い年くらいのカップルが出て来た。黒いミニスカートを穿いた小柄な彼女に、ちょっとチャラそうな彼氏。やたらにボディタッチが多く、イチャイチャイチャイチャ……(特に男の方が、女にちょっかいを出している感じだった)。今日は会えないけど、明日は俺だって三成とデートだし。そのまま泊めてもらう予定だし。
……しかしながら、少々奴は淡泊であるため、ああした触れ合いは俺達の間にはない。前を歩くさっきのカップルが、少し羨ましく思えたり。
翌日、夏物のセールに行きたいという三成と待ち合わせて、ショッピングモールへと買い物に出かけた。
今日の三成の格好は、デニムのミニスカワンピにサンダル、それとカンカン帽を被っていた。彼女にしては可愛らしい服装。
「スカート、似合ってるな。」
三成は何着てても可愛いけど、とかは俺は言っちゃいけないキャラだと思われるので、心の中だけで言っておく(更に言えばスカートから伸びる生足も堪らないのだが、それこそ口にしてはいけない)。
「……ふん。」
あ、照れてる。
「何が欲しいんだっけか。どこから見て回る?」
さり気なく三成の腰に手を回してみる。
……も、キレイにかわされた。
「そうだな、スカートが欲しいんだが…。」
俺の半歩前を歩く三成。腰は嫌か。ならばと肩に手を伸ばすが、
「あそこの店、見て行ってもいいか?」
…わざとかそうでないのか。振り向いた三成の動作により、俺の腕は空を切るだけだった。畜生……。
三成が入って行った店は、何ともメルヘンチックな服飾雑貨店。俺一人なら絶対入れないような雰囲気の。
不意に先にいたカップルを見ると、彼女の尻を軽くポンポンと叩いている男がいた。女の方は妙な接触をさして気にもせず品定めを続けている。「………。」
気にしないもんなのか?俺も、横でTシャツの色で迷っている三成の尻にそぉっと手を……。
「清正。」
「何だよ!?」
突然呼ばれて思わず出した手を引っ込めた。
「さっきからお前の手は不穏な動きをしている……。一体何がしたい?」
「いや、何って……。」
触りたいだけです、とは言えないだろう…。
言い澱んでいる俺の手を、三成は掴んだ。
「悪さができないように、こいつは捕獲する。」
いたずらっぽく笑う三成と、ぎゅ、と握られる俺の右手。恥ずかしいけれど俺の胸はきゅんきゅん!だった。
なんだ、手を繋ぐだけで十分じゃないか。指を絡めるように握り返して、俺も笑った。
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