おねだり。


 暇を見付けては三成の部屋へ通いつめ、既に半同棲状態。そんな生活が続いて、もうどれくらい経つだろうか。講義とバイトが終わって、今日も帰る先は自宅ではなく彼女のアパート。
「ただいま。」
 いつからか、玄関を入るときの挨拶も「お邪魔します」ではなくなった。
「ああ、おかえり。」
 いつからか、あいつもこんな風に返事をしてくれて。
 何か凄いことだよな、これ。とても幸せだと思う(……まぁ、そんなことは口が裂けても言いはしねぇけど)。




 この部屋の間取りは2K。家主である三成は寝室兼私室のカーペットの上で、寝そべってくつろいでいた。
「今日は休診の日だったか。どっか行ったのか?」
「別に。コンビニ行ったくらいだな。あ、冷蔵庫の杏仁豆腐は食べるなよ。あれは俺のものだ。」
「へーへー。」
 もこもこのルームウェアを着て、ごろごろと転がりながら何かの雑誌だかカタログだかを見ている三成。その部屋着、生地は暖かそうだけど下はショートパンツで。寒くないのか?と思ってしまう。
「清正〜。」
 コーヒーでも飲もうかと台所でカップを手にしたところで、ちょいちょいと三成に手招きをされた。
「何だよ?」
「これだ。」
 奴がずいっと差し出さして来たのは、さっきの冊子。どうやら下着のカタログだったらしく、色とりどり、デザインも様々なブラジャーやショーツが誌面に踊っている。別に構わないっちゃ構わないんだけど…恥ずかしげも無く何見せてくんだこいつは。
「…で、これが何だ?」
「買・っ・て・く・れ。」
「は?」
「この、花柄のやつ。」
 珍しくにこにことしながら、三成の白くて綺麗な指がクラシカルな花柄の下着を差す。ひらひらふわふわなそれは、とても可愛かった。が、値段は全っ然可愛くねー。上下合わせて15000円って…俺のパンツなんか三枚990円だぞ馬鹿。
「高ぇな。やだよ。」
「今月は厳しいのだよ!買ってくれ清正!」
「知るかよ…。」
 相手しなくていいな、と思って台所へ戻りかけると、彼女は俺に爆弾を投下してくれた。
「これを着用した俺が見たくはないのか?」
「…っ!」
「脱がしてもいいのだよ?」



 ああもう!!






 そうして俺は、まんまとその下着を購入してしまったのだった。
 家に配送されたその日に、俺の手で着せた上に俺の手で脱がせたのは言うまでもない。想像通り、それは三成にとても似合っていた。





 「……そんなにじろじろ見るな馬鹿。」
「余裕があるうちに堪能しとくんだよ。分かってんだろ?露骨に誘惑する下着買わせやがって。」
「俺はそんなつもりでは……。この助平がっ!」
 悪態を吐きながらも、こいつが満更じゃないのは充分に分かっている。「そんなつもり」があることも。



 ……なんだか、また下着を買い与えてしまいそうな自分がいて、ちょっと嫌だった。





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