はじめまして


 ある日の大坂城の一室……。

 そこには、三成の苦しそうな呻き声が響いていた。
「…う、うぅ、…うぁあ……っ!」


 彼女がいる部屋の扉はしっかりと閉められていて、その前で苦しげな声を聞きながら、清正が右往左往していた。その横で秀吉と正則も、あわあわとうろたえた様子で落ち着きが無かった。
 しかし三成は、大病を患っている訳でも大怪我をしている訳でもない。
「三成、もう少しだよ!頑張って!」
 部屋の中で、ねねが三成を激励する声がする。



 そう、三成は今、現代で言えば分娩室に入っているところなのだ。彼女の呻き声は陣痛に喘いでのものであった。
「叔父貴ぃ、三成スゲー苦しそうだぜぇ?死んじまったりしねぇかなぁ……。」
 中の三成の様子を思って、正則は涙目だ。
「まさか、死んだりはせんじゃろう!しかし…辛そうじゃのぅ〜……。」
 秀吉までもが心配そうに閉ざされた扉を見詰める。しかし一番気が気でないのは三成の番いであり、間もなく父親になる清正であった。
「三成、三成…!俺はここにいる、頑張れ!!」
 先ほどから再三、戸を隔てて愛しい相手に声をかけている。
「…きよ、まさ……。
う……っ、ん、あ゛ぁ…っ!!」
 三成の一際大きな喘ぎ声とほぼ同時に、元気な産声が上がった。豊臣に、新たな命が誕生した瞬間であった。





 生まれたやや子の産湯を済ませたり三成の体裁を整えたりと、出産からしばらくして、ようやく母子との面会が叶った。
「「「三成!」」」
「殿!」
 あれから左近も駆け付け、男四人が布団に横たわる三成と、その隣りで眠っている赤ん坊に駆け寄る。三成は主君と忠臣、姉弟同然の幼馴染みと恋人の姿を見てふにゃりとほほ笑んだ。母子共に健康そうである。



 清正、三成立っての希望で、生まれたばかりのやや子を一番に抱き上げたのは秀吉だった。その子供の容姿はと言うと、銀色の硬質な髪の毛と広めのおでこに、ちょっと浅黒い肌。そして赤子の割には、しっかりとした目鼻立ちをしていた。
「三成、ようやったなぁ〜!
この子は清正にそっくりじゃのう!こりゃあ、将来は頼りになる武人になるじゃろうなぁ!」
 上機嫌に生まれたばかりの赤ん坊を抱っこする秀吉。その肩を、ねねがぽんぽんと叩いた。
「お前様お前様、その子……女の子なの。」
 ねねの言葉に、その場にいた男全員が驚き固まる。威勢の良い産声とこの見た目に、皆男子だとばかり思っていたのだ。
「……母親がこんなに美人なのに、女の子で…父親似ですか……。」
 左近がからかうように苦笑いをし、
「清正みてぇに強くて逞しい姫も、アリじゃねぇの?」
 正則も彼なりのフォロー(?)をする。
「お前ら好き放題だな……。」
 清正はわが子の散々な言われように怒り心頭だ。



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