アオゾラライトB


 拭っても拭っても涙が出て来る。
「…清正の馬鹿……。」
「誰が馬鹿だ、馬鹿。」
 不意に横から聞こえた声。奴だとすぐに分かったが、俺は顔を上げなかった。泣いてる顔なんて、死んでも見られたくない。
「見付かって良かった。校外に出られてたらどうしようかと思った。」
 清正が隣りに腰を下ろした気配がした。あんな態度を取られたのにこの男は、どうしてまだ俺に構う!
「早く教室に戻れ。もうお前とは一緒にいたくない。二度と俺に近寄るな。」
「………それ……別れるってことかよ…。」
 清正の言葉に俺は頷く。あいつの声が震えていたような気がした。



 「嫌だ!!」
 俺の体に衝撃が走る。それが清正に抱き締められたせいだと気付くのに、数秒かかってしまった。
「昨日から、お前が側にいなくて変な感じだった。たった一日なのに、お前がいてくれなくて凄く寂しかった…。」
 ぎゅうぎゅうと抱き締められ、骨が軋みそうだった。痛い。
 …しかしそんなこと構わないくらいに、俺は驚いていた。こんなこいつは初めて見る。
「なぁ、俺のこと、嫌いになったのかよ?俺のどこが悪い?なぁ、直すから、嫌いになんないでくれよ…!別れたくなんかない…っ!」


 いつも俺を守ってくれる強い清正が、俺に縋って泣いている。


「…お前が…、好きだ……っ。」






 「なぁ清正。夏祭り…一緒に行ってくれるか?」
 ぽんぽんと、あやすように清正の背中を撫でる。
「…行く。昨日もあれから、すぐに断わった。お前以外となんて行きたくねぇよ……。」
「毎年、一緒に行ってくれるか?」
「ああ。」
「りんご飴買ってくれるか?」
「何本でも。」
「明日の朝も迎えに来てくれるか?」
「明日も明後日も、ずっと迎えに行く。」
「明後日からは夏休みだろう、馬鹿。」
「あぁ、そうだっけか?でもお前ん家行くよ。」
「用が無いならわざわざ来んでいい。」
 ふ、と笑みが零すと、それを見た清正も笑った。





 俺達はそこで、初めてキスをした。二人共涙で顔がべたべたで、しょっぱい味がした。



 何かと開放的になる夏だが、まだこれ以上は許さないつもりだ。本当に俺が好きなら、我慢できるだろう?清正。

 …でも次のキスはもっと甘いのがいいだなんて思う俺の頭も、だいぶ浮かれているのだろうか。



   ―終わり―


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