咲C


 瞬間、清正は三成を褥に押し倒していた。
「何をする!」
 三成はもがくも、当然のことながら清正はびくともしない。
「何って、何をするためのところだと思う?ここは。」
 にやりと笑った清正の目は、既に肉食獣のそれで。さっきまで不愉快で仕方のなかった白粉や着物に焚き付けられた香の香りが、三成からすると何故こんなにも興奮するのだろうか。頭の奥ではちりちりと理性の糸の焼き切れる音がする。
「秀吉様や、おねね様がいる…っ!」
「向こうは向こうでお楽しみじゃないのか?気にしやしてないさ。」
 帯を解くのも億劫なのか、清正は三成の着物の合わせに手をかける。
「嫌だ、やめろ清正!」
「嫌よ嫌よも好きのうち、だろ?」
「貴様助平爺か!」
「なんとでも言え。好きな相手のこんな姿を見て、何も思わないほど俺は枯れちゃいないんでな。」
 清正の大きな手が三成の太股を辿って行く。これ以上文句を言われないよう、花弁のような唇も塞いでしまえばいい。一度捕らえてしまえば、彼女に抵抗を止めさせてしまうことなど清正にはたやすいことなのだ。自分自身のことより良く知っていて、深く愛している三成の心と身体だから。








 「最高だろ?」



 今宵はきっと熱帯夜。
 まだ、夜は長い。



    ―終―




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