咲B


 結い上げられた髪にはべっ甲で出来た簪が何本も挿さっていて、豪奢な白い花の飾りまで付いていた。あれは牡丹の花だろうか。身に纏う着物は藍色で、蝶や花、絡み付く蔦などが描かれ、上等なものだとすぐに分かるが派手さはなく、上品な雰囲気のもので。下に見える薄桃色の襦袢や細かい刺繍が見事な帯などを含め、全てが三成に似合っていた。


 …どこからどう見ても美しい花魁。


 男は、目の前の女にごくりと喉を鳴らした。




 そんな清正を我に返らせたのは、向かいの部屋から聞こえた秀吉の情けない悲鳴とねねの怒声だった。
「ひぃい〜、ねね!堪忍してくれ〜っ!」
「お前様!今度という今度は許さないんだからね!!」



 「……今ので察せただろう清正。そういうことだ、帰るぞ。」
 ねね達の声を聞き、三成がこの部屋に入って初めて口を開く。
「その格好はなんだ?」
 清正は問わずにはいられなかった。
「これは、おねね様が……。」
 問い質されると恥ずかしいのか、三成は僅かに下を向いた。向かいの部屋では同じくねねも遊女のような格好をしており、彼女曰く一応変装で、「ねね忍法だよっ☆」らしい。
「……すげぇ似合ってるぜ、それ。」
 清正は手放しで三成を褒めた。そうすることしか出来ぬほど、清正にとって今の三成は蠱惑的であった。
「…世辞などいらぬ。」
 三成が布団の上に座り込む。慣れない格好をしているため少々疲れているようだ。裾からはなまめかしい白い足がのぞいた。




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