My neighbor(清三・現パロ)


 ※現パロ(学パロ)で、清正と三成はお馴染みかつクラスメイトです。不良の清正と生徒会長の三成。未遂ですが、清正が三成を襲っています。苦手な方はご注意下さい。






 放課後、明日の一時間目で使用する教材の準備を終えると、三成は急いで学校を出た。革製のローファーを履いているので少々走りにくいが、そんなことは気にならないくらいに彼女は憤っていた(怒りの感情のお陰で走る速度は普段の二割増しくらい)。自宅を通り過ぎて、三成が乗り込んだ先は隣りの清正の家。
 清正と三成は小さい頃からずっと一緒に育って来た、いわゆる「幼馴染み」という関係だった。幼い頃には毎日のようにお互いの家に遊びに行っていて、もうどちらがどちらの家の子か、と言われるくらいだった。親達には止められていたのだが、二階にある清正・三成の部屋の窓を使っての行き来もそう珍しいことでは無かった。靴を履いて玄関に回る間も惜しいほどに、二人は仲が良くいつでも一緒にいた。

 だが、いつからか清正は三成を避けるようになっていた。



 (清正の家は共働き、だから今はアイツしかいないな…。)
 玄関の鍵が開いていたのを良いことに、三成は勝手知ったる何とやらでずかずかと加藤家へ上がり込んで行った。
「清正っ!!」
 清正の部屋のドアをわざと乱暴に開けると、中で彼は週刊の漫画雑誌を読んでいた。
「三成!?」
 清正は突然の来訪者に驚いている様子だったが、すぐに険しい顔になり三成を睨み付けた。
「何の用だよ?」
「何の用、ではない!また今日も学校を休んで!昨日電話で約束したではないか、今日こそきちんと登校すると!!お前はもう出席日数が危ないのだぞ!?」
「…あー……。」
 一気にまくし立てる三成に対し、清正は面倒臭そうに頭を掻いた。
「そんなん、口約束だけに決まってんだろ?お前がピーピーピーピーうるせぇから。」
「何だと!?」
「さっさと帰れ。成績優秀な生徒会長さんが、こんな不良に構ってんじゃねぇよ。」
 しっしっ、と、まるで猫か犬かを追い払うような仕草を、清正は三成にして見せた。一応は心配して様子を見に来たというのに、そんな態度を取られて三成はますます憤る。
「き、貴様…!人がせっかく来てやったというのに!!」
「うるせぇな、誰も来てくれなんて頼んじゃいねぇだろ!?」

 中学校に上がったくらいからだろうか、清正と三成はいつもこんな感じだった。非常に仲の良かったはずの二人は、顔を合わせる度に喧嘩ばかりするようになってしまったのだった。



 「先日も他校の生徒と喧嘩をしたと聞いたが……何を悪ぶってるかは知らんがな、俺はお前なんてちっとも怖くないぞ?」
 ふん、と三成は清正を小馬鹿にするように鼻を鳴らした。
「行長のところの白くて大きい犬に追いかけられて、泣いてたような男ではないか。それに、木登りをしていてズボンを切って、ピカ○ュウのパンツが丸見えに……。」
「てめぇ!!!」
 昔の話を始めた三成の手を掴み、清正は彼女を乱暴にベッドに引き倒した。
「…女を殴るか、清正。」
 威圧するように自分を鋭く睨み付ける清正に対し、三成は涼しい顔をしたままだ。清正はそれが何より気に障った。
「殴りはしねぇ。けど、もっと酷い暴力を振るうことだって、できるんだぜ?」
 ぶちぶちっ、びりっと嫌な音を立てて、清正は三成の制服のシャツを引き裂くようにはだけさせた。飛んで行ったボタンの一つが、かつんと床に落ちる。首に引っ掛かるリボンを適当に放り投げて、グレーのキャミソールをたくしあげると、淡いピンク色のブラジャーが現れた。
「逃げらんねぇからな。俺なんかに構うお前が悪ぃ。」
 舌なめずりをしてから、にやりと笑う清正。そして、彼の大きな手が三成の体中を無遠慮に這い回る。突然のことに驚いて、三成は抵抗すらできなかった。ただただ、自分を組み敷く男を見上げるばかり。
「は、声も出ねぇほどかよ。さっきの威勢はどうした?」


 ……こんな清正、知らない。でも…っ!


 三成の瞳から涙が零れた。
「俺が怖いか?」
(…怖がれ、拒め。そうしたら…すぐ、やめてやるから。)
「怖くなんか、ない!」
 三成は、ぎゅうっとしがみつくように清正の首に両腕を回した。
「お前は、自転車で転んでも泣くし、隠れんぼで見付けてもらえなくても泣いていた。それに…俺がいなくて泣いてしまうような泣き虫の清正じゃないか。誰が……お前なんか怖いもんかっ!」
 三成の声も体も震えていた。虚勢を張っているのだと、すぐに分かる。だが。
「三、成……?」
 彼女の思わぬ行動に、声を震わせたのは清正も一緒だった。
「お前…何で……。」
「お前が好きだからだ馬鹿。このまま何をされたって、俺は……っ、んむっ!?」
 清正は、それ以上は言わせまいと三成の唇を己の唇で塞いだ。
「この…っ、馬鹿!俺の気も知らねぇで!!」
 唇を離すと、清正は顔を真っ赤にして怒鳴り始めた。
「せっかく離れようとしてたのに!何でお前は……っ!ああもう!!俺も好きだ馬鹿っ!!」
 そう言って清正は三成を強く抱き締めた。



 「……つまり、お前はその地毛の銀髪のせいで他人から疎外、不良のレッテルを張られて、『それならばいっそ』、と荒れて…。それで素行の悪い自分と俺が一緒にいたら俺の評判まで悪くなるから、離れたと…。
……随分と馬鹿馬鹿しい話だな。」
 あれから落ち着きを取り戻した二人は、今までの整理を始めた。とは言え、主に三成が清正を問い詰めているだけなのだが(ついでに彼女は今、破かれてしまった制服の代わりに清正のシャツを着ている)。
「うっせー、俺なりに考えたんだよっ!…そ、それに……。」
「それに?」
「…中学んとき、クラスの奴とかがお前のことイイとか言うから、どうしていいか分からなかった……。ずっと、女だとか意識してなくて、気付いたらなんか…お前可愛くなってて……。」
「清正……。」
 遠回りしたな、と三成は一つ息を吐いて、
「もう俺達は付き合うしかないな。」
 と清正にとびきりの笑顔を見せた。清正は、返事の代わりに彼女の唇にもう一度キスを落とした。



 それから翌日。
「清正、起きろ!遅刻するぞ!!」
「ぐぇ!」
 窓から侵入して来た三成は、眠っていた清正に馬乗りになった。その衝撃に呻く清正。
「三成……おま、もっと優しく起こせよ!」
「お前はちょっとやそっとじゃ起きないだろう。」
 もっと文句を言ってやりたかった清正だったが、自分の腰辺りに跨がったままの三成を見て、口を噤んだ。制服の、紺のチェックのスカートから覗く白い太ももが堪らなかったのだ。その視線に気付いた三成は、「いやらしいぞ!」と頬を紅潮させて慌てて彼から飛び降りた。
「今日はお前の頭髪の誤解を解きに行くぞ。」
「嫌だよ面倒臭ぇ…。」
「ふん、この生徒会長様に任せておけ。」
「…へいへい。」

 それから手を繋いで仲良く登校した二人。「生徒会長の石田とヤンキーの加藤が付き合ってる」と言う噂は、瞬く間に校内に広がったとか。



 二人の部屋の窓は、これからずっと鍵が締まらないことだろう。いつ、お互いが訪ねて来てもいいように。今日も風に吹かれて、隣り同士の窓のカーテンがふわふわと揺れていた。




   ―おしまい―



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