思春期未満お断り@(虎佐)


 年の頃を十も過ぎると、子供と言えども何となく異性が気になったりして、また身体も大人へと成長する準備を始める。心も身体もどこかそわそわしてしまうような、一生で一番多感な時期。それが思春期である。



 そんな見ていてくすぐったいような年頃に成長した豊臣の子ども達は、就寝前になると皆で枕を寄せ合い、男同士でこそこそと様々な話をするのだった。


 「一昨日町に行ったときにはちらっとしか見られなかったんだけど、反物屋のおゆいちゃん!可愛いよな〜!」
「そうかなぁ?僕はお団子屋さんのいっちゃんの方が可愛いと思うんだけど……。」
 今日の議題は、どうやら“可愛い女の子について”らしい。
「ん〜…、俺は町の子に興味は無いなぁ。」
 関西訛りの弥久郎は、前の意見には同調できなかった。
「えぇ?じゃあ弥久郎の好みの子ってどんなだよー?」
「そんなん当然、さきちゃんや!!」
「「「佐吉ぃ〜!?」」」
 瞳を輝かせながら答えた弥久郎に、数人の男児が声を合わせて驚く。


 佐吉とは、同じく秀吉に仕える女の子のことだ(彼女は、甘く見られないようにと普段は男装をしていた)。そのため寝所は皆とは別で、鍛練なども一緒にすることは少なかった。佐吉が稽古にあまり出ないことは、性別云々よりも、彼女は頭の良い子どもであったので武よりも文を見込まれて、のことだったのかも知れないが。


 「あんなお高く止まった奴、どこがいいんだよ〜?」
 市松が弥久郎に食ってかかるが、弥久郎はふふんと笑って言う。
「教えんわ。さきちゃんのイイところなんて、俺だけ知ってればええんやから。」
 まぁ、確かに顔は綺麗だよなー、と小姓仲間が呟く。それに対して市松がまた噛み付いた。
「性格悪過ぎて台無しだろありゃ!」
 …どうやら彼は、余程佐吉が気に入らないらしい(それか、好意の裏返しか)。



 「そういやお虎、お前は?」
 虎之助は一人、今夜の会話には加わらず少し離れた場所で布団にくるまっていた。
「俺は、そーゆーのは興味ねぇから。」
「気になる子とか、いねぇの〜?」
 市松がにやにやしながら虎之助に問い掛けた。
「市松、お虎はおねね様一筋やろうが。聞いたら野暮やでぇ。」
「ああ、そうだったな。悪ぃ悪ぃ!」
 どっと笑い出す友人達の声を聞きながら、虎之助は頭まで布団に潜ってしまった。





 気になる女の子がいないなんて、嘘だった。本当は虎之助も、佐吉のことが好きなのだ。姉弟同然に育った、所謂幼馴染みと言うやつだが、気付けば虎之助は佐吉をそれ以上の感情で想っていた。
 なので先ほど、弥久郎が佐吉の話を始めたときには内心気が気ではなかったのだ。



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