アオゾラキラリ☆


 三成、プールに行くぞ。


 ギン千代からのメールの内容はいつも簡潔だ。先ほど来たメールも、たった一行用件のみ。余計なものを好まない彼女の性格を表しているようで、あっさりし過ぎたメールに別段気を悪くすることはない。
「また急だな…。」
 “構わないがいつだ?”と俺も一行で返信をした。するとすぐに、日時指定のメールが返って来た。あと「招待チケットがあるからタダで入れるぞ」、とのこと。


 さて困った。立秋が過ぎても猛暑が続く中、無料でプールに行けること自体は大歓迎なのだが、水着がない。まさか学校指定のスクール水着や、競泳用で行く訳にもいくまい。
「買いに行くしかないか…。」
 財布の中身と相談してみる。まぁ、大丈夫だろう…。水着の新調を決意したところで、俺は携帯電話の着信履歴を開いた。一番上の番号に発信。あいつは決まって、3コールめで出る。

 「三成?どうした?」
「今すぐ来い。」
「……は?」
「何だ、家で暇を持て余しているのではないのか?」
「いや、家にいるけどな。分かった、すぐ行く。」
 なんて便利な男だ加藤清正。そしてすぐさま鳴るインターホン。あいつの家から俺の家までは徒歩2分。



 「水着を買いに行きたいのだが、付き合って欲しい。」
「そりゃいいけど、何で水着がいるんだ?」
「来週ギン千代と二人でプールに行く。」
「……へ?」
「駅前のデパートまで行こうと思うのだが。」
「ダメだ!」
「ならばどこへ行く?」
「そうじゃねぇよ。プールなんて行くな。」
 愛用のカゴバッグに財布を入れようとした手を、清正が掴む。
「……何をいきなり。もう約束したのだ。それを今更違えるなど有り得んだろう。」
 眉間に皺を寄せて清正を見上げながら、手を払い退ける。
「行くぞ。」
 払った手を取り歩き出すと、存外素直に清正も歩き始めた(顔は不愉快そうだが)。


 「何故行ってはならんのだ?」
 並んで歩きながら、清正を覗き込む。
「お前ら二人でプールなんか行ってみろ、悪い虫にたかられまくるぞ。分かってんのかよ。」
「大丈夫だ。そんなの相手にしないし、何よりギン千代がいる。」
「………。」
 夏祭りの一件で、こいつもギン千代の凄さは充分に分かっているらしく黙ってしまう。代わりに俺の右手をぎゅっと握った。



 「………水着…。」
 清正がぼそりと言う。
「ん?」
「…お前の水着姿、他の男に見られんのヤダ。俺だって見てぇし。」
 唇を尖らせて、そっぽを向いてしまった。……その表情が可愛いとか、ほんの少ーし、少しだけ、思ってしまった。
「選ぶの、手伝ってもらうからな。」
「…ああ。」
「試着もするぞ?」
「ああ、その方がいいだろうな。」
「……分からん奴だな!」
 繋いでいた手を思い切り離してやった。
「ぅおっ、何だよ?」
 目一杯背伸びをして、清正の耳に小さな声で伝える。
「試着室で見られるだろう?」



 俺だって一番最初にお前に見せたいのだよ。分からぬか、馬鹿っ!



   ―おしまい―



- 14 -


[*前] | [次#]
ページ:





→トップへ

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -