ヨゾラスキップD


 そんな苦虫を噛み潰したような顔の清正の口許に、俺はりんご飴を突き付けた。奴は遠慮なく齧り付く。
「甘っ。」
「そこがいいんだろう。」
「つーか何味だよコレ。」
「苺みるく。」
「…微妙。」






 「やっぱ手ぇ離しちゃいけねぇな。」
 二人で、指を絡めて参道を歩く。空いている方の俺の手には、お土産用のりんご飴が握られている(もういいと言うのに清正が買ってくれた)。
「人を子供みたいに言うな。」
「だってさっきいなくなっただろ。
それに……。」
「?」
「…いや、やっぱり何でもない。」
「何だそれは。」

(「誰にも取られないように」、だなんて言えるかよ!)




 「来年も再来年も、将来俺達が結婚して子供が生まれてもずっと、毎年りんご飴、お前に買ってやるから。」
「………ああ。」


 いつの間に結婚前提になった、とか、今から未来予想図とかお前乙女か、とか色々ツッコミたいところはあったのだが無粋な言葉も可愛くない台詞も全て飲み込んだ。
 二人並んで見上げた空には星がきらりと光る。花火もいいが、やはり夜空にはこちらの方がしっくりと来る。きっと俺達はずっと、この季節になったらこの道を並んで歩いているのだろう。




 りんご飴を持って。



   ―終わり―


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