ヨゾラスキップ(「アオゾラ」シリーズ・清三)


 先日のつまらぬ諍いを契機に、俺達の仲は周囲に知れてしまった。すぐに夏休みに入ってしまったからいいものの、九月からは女子の嫉妬や羨望の視線が恐ろしいな…。
 清正にそう零したら、「俺だって同じだ」と言われた。何のことだかよく分からぬのだが。



 さて、今日は件の夏祭りの日である。清正とは夕方から出掛ける約束になっていて、今は浴衣や下駄を準備しているところだ。
 濃紺の生地に白百合が描かれた浴衣と、よく見ると市松模様と分かる、山吹色のグラデーションがかかった帯。ついこの間、友人のギン千代と一緒に購入したものだ。俺の分は彼女が選んでくれて、彼女の分は俺が選んだ(藤色に赤紫の紫陽花柄の浴衣と、真っ赤な帯を選んだ。非常に似合っていたと思う)。買うつもりはなかったのだが、特設会場の売り場で眺めているうちに二人してその気になってしまった。…だから、これは決して清正のために新調した訳ではない。




 せっかく和装なのだからと髪を結い上げ、ちょうど着付けが終わった頃に、外から自転車のベルが聞こえた。清正だ。測ったようなタイミングだな…。


 「三成、浴衣……。」
「ん?」
 俺の姿を見るや否や、なんとなく所在無さげにそわそわしている清正。
「それ、新しいのか?その柄、初めて見る。」
「ああ、先日買った新品だ。」
 大層この浴衣が気に入っている俺は、くるっと回って見せた。
「…凄い、可愛い…。」
 ぽやっとしながら清正が言う。な…っ!!
「そ、そんな間抜け面をして何を言うかと思えば!当たり前だ、ギン千代が選んでくれた浴衣なのだからな!」
 恥ずかしい奴めっ。
「惚けてないで早く行くぞ!」
「あ、ああ…。」 




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