過去拍手G(BSR・佐+幸三)


 旦那と俺様と、二人掛かりで必死に説得をした末、ようやく信州は上田に石田の旦那を連れて来ることに成功した(大谷の旦那付きだけど…)。

 色々あって、本当に苦労してここまで連れて来たってのに……石田の旦那、寒がって全っ然動かないんだけど!!
 大谷の旦那の、家紋入りコタツ(石田三成・大谷吉継の二人専用機)に入って、部屋から一向に出て来ない。
「三成殿、こちらからほど近いところに温泉があるのですが、良かったら一緒に行きませぬか?」
「行かん。」
「そ、そう言わずに!某が幼い頃から利用している温泉でして、刀傷や病を癒すにはなかなか効果がありまして……。」
「こんな大雪の中出歩くなど私はしたくない。そんなに行きたいのならば一人で行けばいいだろう。」
「……そうで、ござるか…。」
 こんな時期に連れて来たのも悪かったけど、真田の旦那の落胆ぶりは見ていてかわいそうなほどで。大好きな人に自分の育った町を見せたくて、何度も色んな場所に誘っているけれど色良い返事は一度として貰えていなかった。



 「佐助ぇ!三成殿が…三成殿が全然俺の相手をしてくれぬぅ…っ!今も、大谷殿とコタツでお蜜柑を食べておられるのだ…。うぅ〜……っ。」
 旦那は既に泣きそうだった。つーか俺様に泣き付いてるなう。
「こっちの方が西の方より寒いんだよ、やっぱり。」
「そう思って温泉にもお誘いしたのだが…。やはり出て来ては貰えなかった…。
せっかく上田まで来て頂いたと言うのに、何も施して差し上げられていない……。」
 しょぼくれた子犬と化してしまった旦那に、取りあえず火鉢でも持って行ってみたらどうかと進言してみた。せめて一緒の空間で過ごさせてあげたい、そう思って火鉢の用意を始めると、静かに襖が開いてそこには石田の旦那が立っていた。
「おい真田。」
「三成殿!」
 彼を見ただけで、きらっと旦那の瞳が輝いた。まるで、恋する少年のそれ。
「先ほど言っていた温泉というのは…刑部の病にも効くのか?」
「はい!昔から湯治に使われている湯でして、なかなかに知られた名湯なのでござるよ!」
「……そうか。ならば、連れて行け。」
「御意!!!」
「旦那、声大きい。」
 嬉しいのは分かるけどね。


 しんしんと雪が降りしきる中、石田の旦那に大谷の旦那、真田の旦那と俺、四人で例の温泉へと向かった。
「ヒヒッ、三成よ、ぬしは白くて雪景色の中に溶けてしまうなぁ。あまり遠くへ行くでないぞ?」
「…刑部、からかうな。」
 確かに大谷の旦那の言う通り、銀糸の髪に白い肌……石田の旦那は銀世界があまりに似合い、そして見事に一体化してしまっている。雪原での任務ならば、そこらの忍より数段うまくこなすことができそうだ。
「む、迷子になったら一大事でござる!三成殿、こうしていれば安心でございますぞ!」
 そう言ってぎゅっと石田の旦那の手を握る真田の旦那。
「真田!貴様まで私を揶揄するのか!!」
「何と!こんなにもお手を冷やして……。」
 石田の旦那の威嚇も何のその、旦那は握った白い手の冷たさに驚いて、両の手と吐息で彼の手を温め始めた。それに石田の旦那はぼん!と顔を真っ赤にする。……これなら吹雪の中でも見失うことは無さそうだ。



 「除雪作業は大変だし寒いですが、雪、綺麗でございましょう?町も山も真っ白な、某が見慣れたこの景色を…是非三成殿にお見せしたくて。」
 そう言ってにっこり笑う旦那に、石田の旦那も僅かに口許を綻ばせた。
「…そうだな。この雪景色、悪くはない。実に田舎臭くて。」
「い、田舎…!?確かに、大坂とは比べるべくもありませぬが……。」
 しっかり手を繋いだままやりとりをする二人を見て、大谷の旦那が白い布の下で目を細め、小さくほほ笑んだのを俺は見逃さなかった。
(なんだか、この人とも仲良くなれそうな気がするなぁ…。)





 向かった温泉で、石田の旦那の素肌を目の当たりにした旦那が鼻血を噴いて卒倒したのはまた別のお話(笑)。




- 8 -


[*前] | [次#]
ページ:




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -