過去拍手D(無双・幸三?)


 いつでも凛としていて、清く美しい三成殿。恥ずかしながら、私の想い人。とてもお強いのだけれどどこか危ういこの人を、おこがましいかも知れないが私の手で守れたら、と思う。



 「幸村、遠路はるばるご苦労だったな。」
 上田から大坂までやって来た私を気遣い、茶を点てて下さる三成殿。そんな所作一つ一つが様になっていて、私の心は落ち着かない。だが、平静を装って返事をする。
「いえ、大したことはありません。三成殿の方こそ、近ごろお忙しくしていると聞きましたが。」
 三成殿の目元には、隈ができていた。彼は色が白いから余計に目立つのかも知れないが、夜半過ぎまで無理をしているのだろうということは、容易に想像がついた。
「何やら顔色も優れないようですが……。」
 私が三成殿の顔を覗き込むと、ぱっと視線を外されてしまった。
「大丈夫だ。最近、馬鹿の世話を焼かねばならぬ機会が増えてな…。」
 馬鹿…?三成殿がこのように揶揄するお相手とは……。
「あのお二方ですか。何だかんだ、三成殿を頼りにされているのですよ。」
「何を。」
 貴方だって、本当は加藤殿や福島殿を信頼しているでしょうに。とは口にしないで、小さく笑う。私も三成殿に信頼されていない訳ではないが、どうもあの幼馴染みのお二人とは違うように感じる。そう考えると少し胸の奥がちくりと痛んだ。




 いつの日か貴方から全幅の信頼を得て、隣りに立つことができるように。私は決意も新たに三成殿を見詰めた。



 そのとき、彼の頬が僅かに朱に染まったように見えたのが、私の気のせいでは無ければ良いと思った。




    ―終―



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