過去拍手A(思春期清三)
最近、どうにも俺はおかしい。
三成を見ていると妙な悪寒がするし、奴が誰かと親しくしていると胸が苦しい。奴の一挙手一投足がいちいち俺の心を乱すのだ。
辛くないと言えば嘘になるこの感覚だが、不思議と嫌ではない。……まさか、まさかとは思うが、俺は三成のことが……。
「……愛ってなんだ?」
「…は?」
ぽろりとこぼした独り言を、よりにもよって三成に拾われてしまった。
「何だ、一丁前に愛などと。何か悩んでいるのか?」
三成は面白い玩具を見つけたと言わんばかりの顔で俺を見上げる。近っ!近ぇよ馬鹿!!
「違ぇよ。あの、上杉の家臣の兜。アレの意味が分かんねーって考えてたんだよ。」
俺はあくまで平静を装いつつ、若干苦しい言い訳をした。
「兼続のあの兜か。確か綾御前様に賜ったと聞いたが、奇抜ではあるな。」
「ふーん?」
マジかよ、上杉家趣味悪っ!
「しかしあれは愛染明王だか愛宕権現だかの“愛”の字であって愛情の“愛”と言う意味ではないと言っていた気もするな。そんなに気になるなら兼続本人に聞いてみたらどうだ?義だの愛だの、とくと語ってくれるだろう。」
「そこまで気にならねーよ…。」
「それもそうだな。」
今日は機嫌がよろしいらしく、姫がくすくす笑う。たったこれだけで、俺は満たされた気持ちになる。心にぽっと灯が灯ったような、温かい心地良さ。
俺はきっと、三成に恋をしている。
「お前もあんな兜を身に着けてみたらいいんじゃないか?そうだな、お前の大好きなおねね様の、“ねね”と掲げて戦うのはどうだ?」
なのにこいつは全然気付いてくれない!!
(兜に“三成”とか“佐吉”とか掲げないとダメですか?)
―終―
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