過去拍手22(無双・清三、現パロ)
「こっち方が観やすいか?いや、もうちょっと後ろに下げた方が良いのかも知れねーな……。」
日曜の早朝から、何やら落ち着かない清正。先ほどまでは掃除機をかけていて、今はテレビの前にあるソファをぶつぶつ言いながら動かしていた。
「こんなもんか?」
今日は三成を部屋に招いて、レンタルして来た映画のDVDを観るのだ。清正は、そのプチ上映会の準備をしている真っ最中であった。可愛い可愛い恋人が来るとなれば、気合が入るのも無理は無い。
「お茶菓子と飲み物も用意したし、あとは三成が来るのを待つばかりだな。」
清正はそんな独り言を言いながら、借りて来た数枚のDVDの中身が確実に入っているかとケースを開けて確認をした。シリーズもののそれは、ショップの手違いなどは無く、中のディスクとタイトルは合致していたのだった。
ーピンポォ〜ン。
ちょっと間の抜けたインターホンの音が鳴る。若干外れたこの音は、清正がこの部屋に越して来たときからのもので。だが、特に困ることも無いからとアパートの管理会社に申し出ることは無かった。
「三成!」
清正は確認もせず、玄関のドアを開けた。その向こうには、思い描いていた通りの人物が仏頂面で立っていた。
「…来てやったぞ。」
「またお前は…。相変わらずな挨拶だな。ま、入れよ。」
三成は可愛げの無い挨拶(?)をし、清正の部屋に上がった。その手にはスーパーの白いビニール袋が握られていて、手土産を持参して来たのが分かった。それは、重い荷物を持ったりするのが嫌いな三成にしては少し珍しいことであった。素っ気無い態度を見せながらも、彼も今日の訪問を楽しみにしていたのだろう。
「何か色々悪ぃな。」
「別に。他人の家に手ぶらで来るのが嫌だっただけだ。如何にお前の部屋と言えどもな。」
「お、ポップコーン買って来てくれたのか。気が利くな。映画っつったら、やっぱコレがねぇと。」
嫌味な物言いも何のその、清正は三成が持参したレジ袋の中を覗くと、白い歯を見せて破顔した。
「ちょっと多過ぎやしないか…?」
清正が用意したのは、大きな紙コップになみなみと注がれたコーラと、ポップコーンを一袋丸々盛ったバスケット。
「映画館みたいなアメリカンサイズを意識してみた。雰囲気出るだろ?」
「…お前が凝り性なのは今更か。」
三成は早速ポップコーンを一粒摘まむと、小さく笑った。
「じゃ、再生すんぞ。」
二人で並んでソファに座り、清正がDVDプレイヤーのリモコンを握ったと同時に、
ーピーンポォ〜ン。
あのアホみたいなインターホンが鳴った。
「何だよ!」
タイミングの悪さが加わり、この間抜けな音に対して清正は初めて怒りを覚えた。今度直してもらおうと決意させる程度には。
「…クロネコさんだった。実家から八朔送って来たから、帰り幾つか持ってけ。」
「……ああ。」
熊本の実家から届いた段ボールを適当にキッチンの隅に置いて、今度こそと思った瞬間。次は清正の携帯が震え出した。ディスプレイに表示されたのは彼の母親の名。『荷物を送ったが届いたか』という内容の電話だと分かり切っているので、清正はそれをキレイに無視した。と言うか携帯電話の電源を落とした。
携帯をテーブルの上に置いてちらりと横を見れば、三成がちょっと不機嫌そうな顔をして唇を尖らせている。清正は「わり」と言ってから三成の頭をぽんぽんと撫でて、ようやくと再生ボタンを押したのだった。
映画の前半部分が終わったところで、清正は思った。
(……これ、ハズレじゃね?)
数年前に話題になった映画のはずなのに、あまり面白くない。全米が震撼したはずなのに、あまり面白くない。アクションシーンとCGは、大きなスクリーンで観たならば迫力があったのだろうが…。
手持ち無沙汰にコーラをあおっり、横に座る恋人の様子を窺おうとすると肩に重みを感じた。よほど退屈だったのか、三成は眠ってしまっていた。
「……ま、仕方ねーか。」
清正はDVDを止めると、肩にもたれて眠る三成を抱き寄せて、目を閉じた。
(こんな休日も悪くねぇな。)
今日はぽかぽか陽気のお昼寝日和だ。二人が風邪を引くことも無いだろう。
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