過去拍手20(無双・清三、猫化パロ)


※猫耳とかじゃなくて、完全に猫化した清三(?)のお話です。



とあるペット可のマンションの一室、日当たりの良い窓辺で白い毛並みにラズベリーピンクの首輪をした猫が昼寝をしていた。
この猫の名前は三成と言って、間もなく二歳になるオスだ。彼の飼い主は仕事に出ていて昼間は大抵いない。だが、タイマー式でキャットフードは出て来るし常に清潔な水も用意してあるので、空腹に困ることは無かった。それに、何の邪魔も無く好きな時間に好きな場所で、好きなだけ惰眠を貪れるので主人が帰宅するまでの間は三成の天下なのであった。まぁ、飼い主の女性は三成に甘いために、いたとしてもワガママ放題が可能なのだが。

外は強い北風が吹き付け凍える寒さであったが、備え付けの性能の良い断熱窓のお陰で三成は暖かな日差しの恩恵だけを受け、しなやかな尻尾を揺らし時々体勢を変えたりしながら、クッションの上でぬくぬくとくつろいでいた。しかし、ふと外に何者かの気配を感じて彼は頭を持ち上げた。耳をぴくぴく動かしながら窓の向こうを覗くと、ベランダの隅に自分より一回りほど大きなキジトラの猫がいて、こちらの様子を窺っていたのだった。

「…よぉ。」

三成と目線が合うと、その猫は軽く挨拶をした。どうやら、敵意は無いようだ。とは言え、こんなに近くで他所の猫を見るのが初めてであった三成は、警戒を解かない。

「何者だ、貴様。」
「何者だ…って言われてもな。『ただの野良猫』としか言いようが無いな。俺は清正っていうんだが、お前の名前は?」
「……三成。」
「三成か。良い名前だな。」

三成は得体の知れない相手を怖いと思うよりも、好奇心の方が勝ってしまった。彼は生まれたときから家猫であったので、外の世界を知らない。そんな未知なる領域のことを知っているだろう猫に、興味を持ってしまうのも無理の無いことであった。三成は清正のグリーンの瞳をじっと見詰めてから、おずおずと窓ガラスの方へ近付いて行った。

「俺の主人が、外は危ないところだと言っていた。お前は大丈夫なのか?」
「危ないところ?寒かったり暑かったりするのは大変だが、そう考えたことは無かったな。俺みたいな野良猫は、外で生きるしか無いんだから。
でも確かに、でっかい車が走ってたり怖いおばちゃん追っ払われたりとかするし…。温室育ちの猫にゃおっかねぇところかも知れないな。」
「貴様は俺を馬鹿にしているのか?」

清正の物言いにカチンと来て、三成は目の前の猫をキッと睨み付けた。美形の猫であるから、その迫力はなかなかのものであった。

「別にそんなつもりはねぇけど、お前は外に出ない方がいいと思ってな。」
「何故だ?」

清正は一度、三成を尻尾の先から耳の先っぽまでを眺めて目を細めた。

「お前は真っ白で綺麗な毛並みをしてるから。外なんかに出たら、すぐに汚れちまう。フェンスの下をくぐれば泥は付くし、排気ガスや砂埃であっと言う間に真っ黒だ。そしたらご主人様が悲しむだろ?」
「………。」

そう言われて三成は、いつも可愛がってくれている主を思い出した。汚れるくらいならまだいいが、もしケガでもしようものならあの若い女性は泣いてしまうかも知れない。

「外のことが知りたいなら、俺が話してやるよ。」

それから清正は、たくさん外の世界の話をしてくれた。このマンションの裏には駐車場があって、そこの前の道をしばらく行くと商店街があることや、その商店街の肉屋さんは時々売れ残ったコロッケやカツをくれること。どこどこの家には大きなドーベルマンが住んでるとか、公園の噴水の水は汚いからなるべく飲まない方がいいとか。三成は清正の話を熱心に聞いて、瞳を輝かせながら相槌を打ったり続きを促したりしていた。

二匹が気付くと、すっかり日が暮れて辺りは暗くなっていた。話に夢中になり過ぎていたようだ。

「もうすぐ、主人が帰って来る時間だ。」
「そうか、じゃあそろそろおいとましないとな。」

後ろ足に力を入れてジャンプをしようとする清正に、三成が待て、と声を掛けた。

「ま、また……会えるか…?」
「お前がまた会いたいって言うなら、また来てやるよ。」

清正はそう言ってニッと笑うと、窓ガラスに鼻をむにっとくっつけた。その顔があまりに不細工で、三成は思わず吹き出してしまった。そして、清正に倣い自分も少しだけ冷たいガラスにピンク色の鼻をぺちょっと押しつけた。

「「約束な。」」

清正がベランダの柵を軽々と飛び越えすぐ近くの木に飛び移ったのとほぼ同時に、玄関のドアが開く音がした。

「ただいま〜。三成、良い子にしてた?」

ご主人様のお帰りだ。

「みゃお!」
「ん?今日はご機嫌だねぇ。何か良いことあったの?」

三成には、ニコニコと笑って自分を抱き上げる飼い主に今日あった『良いこと』を伝える術は無い。だが、もし言葉を喋れたとしても……彼は清正のことを自分だけの秘密にしていたことであろう。

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