過去拍手18(無双・清三+幸→兼?、学パロ)


学校からの帰り道、三成と清正の前を、幸村ががっくりと肩を落としながらとぼとぼと歩いていた。彼からは暗〜いオーラが見えて、何から溜め息まで吐いているようだった。普段の幸村の様子からは考えられない状態だ。そんな友人を二人は放っておけず、後ろから幸村に声を掛けた。

「幸村、一体どうしたんだ?」
「随分と落ち込んでいるみたいだが…。」
「三成殿、清正殿……。」

俯いて歩いていた幸村が顔を上げて二人を見たが、その瞳に光は宿っていない。

「学校で何かあったのか?」
「いえ、別に…。」
「何も無いって顔じゃねぇだろ、それ。」
「……すみません。」

三成と清正は近くのマックに幸村を連行すると、半ば無理やり話を聞き出した。

「実は、クリスマスを兼続殿と共に過ごしたいと思い、今日思い切ってお誘いしてみたのです。」

幸村は、兼続に恋愛感情と呼んでもいいほどの好意を寄せていた(兼続は鈍過ぎるせいでそのことに微塵も気付いていないのだが)。今年のクリスマスは週末と重なって連休になっており、距離を詰めるには良い機会だと踏んだのだろう。しかし兼続から返って来た答えは色良いものでは無かった。

「『私はキリスト教徒では無いからクリスマスという行事に興味は無いな。それに、23・24・25は三日間共外せない用事が入っている。すまないが、遊びに行くならば年が明けてからにしよう。』…だ、そうです……。」
「幸村、ものまねご苦労だった。」

兼続のものまねをして状況の説明をしてくれた幸村に、三成は苦笑いを浮かべた。似てると言えば似ている、微妙なクオリティだった。

「兼続殿の外せない用事って何でしょうか…。私よりも、大切な用事って……。」

涙目になりながらコーラをすする幸村の頭を、三成がよしよしと撫でてやる。

「そう言えば、思い出したんだが…。」

食べていたチキンナゲットを飲み込むと、清正は徐に口を開いた。

「あいつの家って神社じゃなかったか?年末は、初詣の準備とかで遊ぶ暇が無いんじゃねぇの?」
「…ああ、確かに神社だったな。なるほど、クリスマスとは無縁で多忙なわけだ…。」

三人は兼続の実家が大きな神社だったことを思い出し、合点と頷き合った。

「なら幸村、23日からの連休に手伝いを申し出てみてはどうだ?」
「お、それいいな。三成、早速電話かけてやれよ。」
「お二人とも!私はそんな…っ!」
「遠慮をするな!」

三成は自分の携帯電話を取り出すと、素早く兼続に発信した。

「…もしもし、兼続か?幸村がお前に話があるらしい。ちょっと代わるな。ほれ。」
「え、わっ!本気ですか三成殿!
…も、もしもし兼続殿、幸村です。今三成殿と清正殿と一緒におりまして…。そ、その〜……。」

清正は、「そんなんいいから早く言えよ!」と言い淀んでいる幸村を小突いた。

「あの…23・24・25の三連休、よろしかったら、兼続殿のご実家の神社の…お手伝いをしたいと思いましてっ!
…え!?よろしいですか!?ありがとうございますっ!!」

是非来てくれと言われたのだろう、幸村の表情がぱぁっと明るくなった。それを見て、三成と清正は顔を見合わせながら、ニッと白い歯を見せて笑った。



ー翌日。

「三成!清正!二人ともありがとう!!」

清正と三成が校門の前で兼続に出会うと、彼は満面の笑みを浮かべていきなり礼を述べて来た。

「昨日の幸村の件か?それならば礼には及ばないが。」
「お前達二人も歳末の手伝いを申し出てくれるなんて感激だ!やはり持つべきものは友だな!謙信公も喜んでいらっしゃった!!」
「「は?」」

…昨日の幸村の電話の、『今、三成と清正と幸村と三人でいる』『連休で実家の手伝いをしたい』という情報だけを兼続は拾ってしまい、『三人で手伝いをしてくれる』と勘違いをしてしまったようだった。確かに『幸村が個人的に』とは一言も言ってないので、そう解釈してしまったのも仕方が無かったかも知れない。

「勿論バイト代も、食事も出すからな!時間など詳しいことはまた追って連絡する!私は本当に良い友人を持った、果報者だな!!」

兼続はもう一度二人に礼を言うと、担任の教師に呼ばれているからと昇降口へと走って行ってしまった。兼続が喋り出すと口を挟む余地が無いのは常のことであるが、意図せずしてクリスマスの予定を組まれてしまい、清正と三成は並んでぽかんとその場に立ち尽くしたのだった。



結局、クリスマスは清正、三成、幸村、兼続の四人(+上杉家の人々)で過ごすこととなった。

「何で世間が浮かれまくっている中!俺は破魔矢を袋に入れているんだ!!」

昔ながらの達磨ストーブが稼働している室内にて内職をしている最中、三成は突然紙袋の山をバン!と叩いて大声を出した。

「三成、ここまで来たらもう文句言うなよ。そんなことより、紙で手を切ったりするんじゃねぇぞ?」
「あ、ああ…。お前もな…。」
「俺は大丈夫だ。ほら、ちゃんと指サック使えよ。」
「………。」

不満を漏らす三成と、それを宥める清正。何だかんだといちゃつく二人を見て、幸村は非常にしょっぱい気持ちになった。

「みんな、そろそろお茶にしよう。幸村は一番数をこなしてくれたからな、特別に団子を多く出してやろう。」
「わぁ、ありがとうございます兼続殿!」

だがお盆を片手にした兼続が現れた途端、幸村は破顔して嬉しそうに想い人に駆け寄って行った。

……皆幸せそうで何よりだ。



幸村達は綾御前に年始もアルバイトを頼まれ、『上杉神社の禰宜は皆イケメンだ』と話題になったのは……また別の話である。

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