過去拍手16(無双・清三、現パロ)


気付くと今年も残り1/4を切り、月日が経つのは早いものだななんてぼんやりと考えながら、清正は随分と高く見える青く澄んだ空を見上げた。

彼はドラッグストアの入り口の真横に立ち、中で会計をしている三成を待っているところだった。今日はポイントが10倍の日だとかなんとかで、店内はかなり混雑していた。華奢な恋人がそんな中で揉みくちゃにされるのは忍び無かったが、当の三成が「お前はデカいから他の客に迷惑だ」と退避を命じたのだ、特に買う物の無い清正は黙って外へ出るしか無かった。

「待たせたな。」

流れて行く羊雲を目で追っていると、三成が店から出て来た。

「おぅ。目当てのもんは見付かったのか?」

清正は、三成が左手に下げている白いビニール袋に目を遣った。中身の重さで少し伸びているそれ。持ってやろうと手を伸ばしたが、三成は渡してくれなかった。
その代わりに。

「これをお前にやろう。」

レジ袋の中から取り出した、ハンドクリームを渡された。

「一つだと298円だが二つ買うと500円になるという価格設定だった。」
「ああ、なるほど…。」

三成は、ケチというほどでは無いが浪費を嫌い、金銭感覚がしっかりしている。お買い得商品を見逃さずいつもうまく買い物をしているのだ。ポイントカードでパンパンになっている彼の財布は、最早どこの主婦か、と言える代物であった。

「それは俺が愛用しているハンドクリームでな。なかなか良い品物だぞ。」
「そうか、サンキュな。」

(俺はお前みたいに肌が弱く無いから、あんまり必要無いんだがな……。)

清正はそんなことを思いながらも、決して口には出さずにもらったハンドクリームをバッグにしまった。



清正が人の目を掻い潜りそっと三成の手を握ると、少しだけカサついて、荒れていたのが分かった。夏の間はキメ細やかでつるつるとした肌触りだっただけに、何だか痛々しくさえ感じた。

「ちょっと手、荒れてるな。」
「ああ…。最近空気が乾燥してきたからな…。すぐに手肌が傷んで血が出てしまうから、保湿が欠かせぬのだよ。」

そう言うと三成はやんわりと握られた手を解き、買ったばかりのハンドクリームを手に塗った。途端、ふわりと花の匂いとも果物の匂いともつかぬ甘い香りが広がった。

「いつもお前から甘い匂いがすると思ったら、これの匂いか。」
「臭いか?」
「いや、別に。」



清正は帰宅してから、もらったハンドクリームをそっと開封した。それを手の甲に少しだけ出して、良く伸ばす。しっとりと肌になじみ、三成の言う通り確かに使い心地の良いものだった。
先ほど嗅いだ例の香りが鼻腔を擽ると、どうしても思い出すのは恋人のことで。

(三成と手ぇ繋いでるみたいだな……。)

そんならしくも無いことを考えて、清正は自分の恋する乙女のような思考回路に顔を真っ赤にしたのだった。

(さっき家まで送ったばっかなのにおかしいと思われるか…?でも、人恋しくなる、こんな季節が悪ぃんだよ!)

恋しいと思う気持ちを秋のせいにして、三成の声が聞きたくなった清正は携帯電話に手を伸ばした。

彼の電話が、三成からの音声着信のメロディを鳴らし始めたのは正にそのときのことであった。

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