過去拍手K(無双・左+清三、父の日ネタ)


 「これはまたとない好機だ。清正も協力してくれ!」
「お前の言い分も分からなくはないが…。それで事態が好転するとは限らないぞ?」
「やってみなければ分からぬ!」
 殿の部屋の前を通り掛かったら、清正さんと殿が何やら話し合いをしていて、軽く口論をしているのが聞こえて来た。言い争うことは彼らなりの意思疎通法であるので、いつものことと思って俺はそれには介入しなかった。
「……行長の話に乗るっつーのが気に入らねぇなぁ…。」
「今はそれを問題にするな馬鹿!」
 一体何の話をしてるんでしょうねぇ。まぁ、大喧嘩にならなきゃいいんだが…。



 それから数日後のこと。
 殿と清正さんと、それから行長さんまで忙しなく城内を行ったり来たりしていた。

 「さきちゃん、頼まれたもん、運んどいたで。」
「行長、すまないな。お前の尽力、感謝する。」
「何言うてんねや!さきちゃんのためなら一肌も二肌も脱ぐて!ま、間接的にお虎のためってのが引っ掛かるけどな。」
「…ちっ。てめぇなんか全裸になって風邪引いちまえ。」
「何やと!?」
「喧嘩をするな!」

 ああもう騒々しい。
「殿、清正さん、行長さん。一体何事ですか?」
 辛抱堪らず、俺はお三方に声をかけた。
「さ、左近……。」
 殿達は、俺の登場に何故だか固まってしまった。彼らがいた部屋を見渡すと、宴会の準備でもしているのだろうか、隅の方に高級そうな酒がいくつも並んでいた。
「酒盛りか何かの準備ですか?人手が必要なら俺も手伝いますよ。」
 そもそも、そんな仕事なら家人達にやらせればいいのに。この三人が直々に支度とは、どなたかお偉いさんでも来るのだろうか。
「あー、島はん!何でもないんや。俺ら内輪だけで酒飲もかって話になって。どうせなら豪勢にぱーっと、ちゅーことになってなぁ。そんで、用意した酒がどうとか、何が食いたいとか話してただけやから。」
「そうなんですか。」
「ああ、悪いが今宵は俺達だけで楽しませてもらう。」
 なるほどね。たまにはこんな息抜きも必要かも知れない。
「後で正則と吉継も来るぞ。」
 …こりゃ、今夜は騒がしくなりそうだ。



 その晩はとても月が綺麗で、俺は特別することもなかったので月見酒でも洒落込むかと猪口を手に取った。
(殿達の宴会も、そろそろ始まった頃合かねぇ…。)
 そう思ったとき、静かに戸が開いて、そこには清正さんがいた。
「おや?これは清正さん。皆さんでお楽しみの最中じゃ?」
「お前を呼びに来たんだ。」
「え?」
 訳の分からぬまま、俺は引き摺られるようにして清正さんに連行された。

 連れて行かれた先の部屋。俺は「何が待っているんだ…?」と恐る恐る襖を開けた。
 すると目の前に、見たこともない黄色い花が差し出された。その、太陽のような花を持っていたのは殿だった。
「殿??」
 俺は戸惑いながらそれを受け取り、ぽかんと殿を見た。殿の後ろには、吉継さん、行長さん、正則さんがいる。そこに、清正さんも加わった。
「…今日は、異国では父親に感謝の意を表す日らしい。行長に教えてもらった。」
 行長さんに視線をやると、彼はニッと無邪気な笑みを見せた。
「その花、ひまわりって言うんよ。今日、お父んに贈ると喜ばれる花なんやって。お日様みたいで、キレイやろ?」

 「お前が有能な軍師であるのは誰しもが認めるところだ。……まぁ、年齢からしての話だが、俺はお前を父親のように思ってないこともない。だから今日は、お前を労ってやろうと思ってな。
そ、その、なんだ…。感謝…している……。」
 何てこった。こんな事態は想定していないぞ。昼間の準備や、この宴会は俺のために…?ヤバい、嬉し過ぎて言葉が出て来ない…。
「ふん、敢えて言っておくが、これは行長の発案だからな。感謝なら奴にするようにっ!」
 真っ赤な顔して、なんていうツンデレっ!!
「殿〜ぉ!!」
 俺が感激のあまりに殿に抱き付こうとすると、それを清正さんに止められた。そしてその彼の隣りに立つ殿。
「それと、左近にもう一つ言っておきたいことがある。」

 「「俺達、付き合ってるんだ。」」

 殿と清正さんの声が重なる。
「ここにいる連中はみんな知ってる。あと秀吉様とおねね様にも報告済みだ。」
 そう言いながら、清正さんが殿の手を握った。
「左近、今まで黙っていて悪かった。父親のようなお前にだからこそなかなか言えなくて、お前にだからこそ……俺達を認めて欲しいのだ。」

「えぇえええ!!?」

「頼む左近!清正も三成も本気なんだよ!」
「僕からもお願いするよ。二人を認めてあげて欲しい。」
「せや島はん!あいつらほんまに好き合うとるんや!この通りや!」
 正則さん、吉継さん、行長さんが俺を説得して来る。説得と言うより、嘆願に近いか。しかし、急な展開に頭がついていかない。

 …と言うか、俺はそんな父親だと思われていたのだろうか。わが子(?)の交際を認めないような頑固親父だと。

 「分かりましたよ。ただし清正さん、うちの殿を泣かせたりしたら承知しませんからね。」
 俺は笑いながら、清正さんを殴る真似をした。俺の言葉に、殿の顔がぱぁっと明るくなる。
「左近っ!!」
「おっと。」
 俺の胸に殿が飛び込んで来た。続いて
「やったじゃねぇか!左近ありがとよ!」
 何故か正則さんまで抱き付いてきた。
「さすがや!」
「ありがとう!」
 それから行長さんに吉継さんも俺に引っ付いて来る。そして最後に、
「泣かせたりなんか、絶対しねぇから。」
 清正さんが体当たりするように飛び込んで来た。その勢いで、俺達六人全員が倒れてしまった。

 俺はおかしくて、それから凄く幸せで、笑いが止まらなかった。



 「今日は朝まで飲みましょう!」
「「「「「おぅ!!」」」」」




 Happy father'sday!!


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