余所でやって下さい!


 ※佐助視点のお話で、少しだけ刑部も出て来ます。幸三はまだ結婚はしていなくて、婚約の段階です。最後がちょっとだけ下品?かも知れません…。







 「…幸村。」
「はい、こちらに!」
「別に用は無い。」
「左様でございますか。」
「三成殿。」
「何だ。」
「呼んでみただけでござる!」
「……そうか。」
「三成殿。」
「幸村。」
「三成殿。」



 ピンクのハートがいくつも飛んで来て、俺様の頭にスッココーンと当たる。この間ふざけて、「夫婦になるんだから、旦那さんを名字で呼ぶなんておかしいよお嬢〜。」だなんて言ったが最後、真田の大将と石田のお嬢はずっとこんな調子だ。それに対して、若干居心地を悪く感じるのは仕方のないことだと思う。大谷の旦那なんか、二人を見ては溜め息吐きっ放しだし。
「手塩にかけて育てた愛し子を、あんな若造にさらわれるとは思わなんだ……。真田め、いかような呪いをかけてくれようか…。いや、しかし、そうして三成が悲しむのであれば、それはわれの本意ではない…。さて、どうしてやれば良いものか……。はぁ……。」
 アナタお嬢の親でしたっけ?とか思わないことはないけど、娘を嫁にやる父親の複雑な心境なのか、大谷の旦那は随分と沈んだ様子だ(普段の読めない感じも相当不気味だけど、なんかこれはこれで怖いと思う…)。



 そんな折、ちょっと諸事情があって大将が信州へと戻ることになった。大坂には長曽我部軍が残ってくれてるし、余程のことが無い限り大丈夫だとは思うんだけど、大将はしきりにお嬢を心配していた。今も文机に突っ伏して、何やら呻いている。大方手紙でも書きたいのだろうけど、どう書いたらいいのか分からないってとこだろう。
「うぅむ…歌でも送ろうか……。」
「アンタ歌なんか書けるの!?」
「三成殿……今は何をしていらっしゃるのだろうか…。」
 大将は窓から西の方角を見ながら更に続ける。
「佐助、俺は初めて三成殿を見たときには、ただ恐ろしい方だとしか思えなかった。同盟を組んで戦場を共に駆けるようになって、あの方の真っ直ぐな信念と清い性根を知った。そして、戦場以外でも共に在りたいと、どこか危ういあの方を、ずっと側にいて守って差し上げたいと思った。」
「大将……。」
 初めて吐露された、お嬢への真摯な気持ち。大将の一途な想いに、さしもの俺様もじーんと来てしまった。
「俺は、三成殿ほど美しく気高いお方を知らぬ!日の本で一番だ!
ああ…三成殿…。」
 結局のろけか!!!
「あーはいはい、確かにお嬢は美人だよね〜。」
 そう適当に相槌を打つと、大将が急に俺の胸倉を掴んだ。
「佐助!お前まさか三成殿をそのような性的な目で!?変な気を起こそうものなら、分かっているだろうな!!?」
「そんなことする訳ないでしょーっ!!」
 何なのこの人、超面倒臭いんだけど!!!

 そこへ、救いの手とも言える存在が現れた。侍女がお茶と一緒に、一通の書状を届けてくれたのだ。差出人は……。
「大将、お嬢からだよ!」
「何!?早く渡さぬかっ!」
 お嬢の名前を聞くや否や、大将は俺の手からその書状をひったくった。宛名だけを見ても几帳面な美しい文字が並ぶそれを、大将は丁寧に丁寧に開いていく。


 『別に早く会いたいだなど思っていないが、息災かどうかくらいは文を寄越して教えろ。こちらに変わりは無い。』


 …何とも、あの人らしい淡白かつ高圧的な短い文章。だが、そこからお嬢なりの気遣いが見て取れた。いじらしくて、可愛いねぇ。本当は大将に会いたいんだね。

 「うぉおお三成殿ぉー!!某は元気でございますぞ!!!すぐにそちらに参りますゆえ!!」
「大将落ち着いて!!」
「天守から思い切りこう叫べば、大坂まで聞こえるだろうか!?」
「聞こえねーよ!!」



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